国土地理院、衛星測位で正確な標高を算出可能にする「航空重力測量」の出発式を開催
国土地理院は、日本全国の均一な重力データを測定するための「航空重力測量」を今後4年間にわたって実施すると発表し、7月22日に調布飛行場にて航空機の出発式を開催した。
航空重力測量は、日本全国の重力データを用いて標高の基準を構築することを目的に行われる。スマートフォンやドローンに搭載されている衛星測位機能を使って測定される「高さ」は、地球を楕円体で近似した表面からの高さ(楕円体高)で、一般的な「標高」を求めるには、楕円体の表面から標高の基準となる面(ジオイド)までの高さを意味する「ジオイド高」が必要となる。
現在の標高は、東京湾平均海面を0mとして水準測量で決められているが、航空重力測量で取得した日本全国の重力値と、既存の地上重力や衛星重力のデータを使って、新たな標高の基準となる「精密重力ジオイド」を構築することにより、スマートフォンやドローンなどの衛星測位機能を使って簡単に正確な標高を算出可能となる。また、衛星測位を用いた測量作業の効率化や、公共工事などでの生産性の向上、災害時の迅速な復旧・復興にもつながる。
これまでの重力データは山岳部や沿岸地域に空白域があり、観測時期が古いことから、今回、日本全国の均一で高品質な重力データを測定することにした。航空機による全国(離島を除く)の重力測量は、国内では初めての取り組みとなる。測定用の航空機は今後、日本全国を10km間隔で、高度3,000~5,000mで飛行する。
スケジュールについては、2019年度は関東・中部の測定を実施し、2020年度は東北・近畿、2021年度は北海道西部および中国・四国、2022年度は北海道東部および九州を測定する予定で、今後4年間で離島を除く全国の重力値を測定する。航空機はセスナ208型を使用する。
重力値は、地形や地下構造などの影響によって測る場所ごとに異なる。航空重力測量では、航空機に精密なバネばかり(航空重力計)を搭載し、バネの伸びから各地点の重力値を測定する。航空重力計は、センサーであるバネばかりのほかに、ジャイロやダンパー、制御部、無停電電源などで構成される。航空機の位置や速度・揺れなどは、GNSS/IMU(衛星測位装置/慣性計測装置)で計測して補正を行う。
国土地理院 測地部長を務める大木章一氏は、出発式の冒頭の挨拶で、「標高は水準面からの高さで決まり、水準面は重力の分布によって決まります。このため、衛星測位のデータから標高を高精度に決めるためには、高精度・高密度な重力データが不可欠となります。重力データは次の新しい社会を支える目に見えないインフラとなります」と語った。
航空重力測定で得られた重力データは今後、衛星・海上・地上で測定されたその他の重力データと合わせて解析し、従来よりも高精度な全国のジオイド・モデル(精密重力ジオイド)を2024年までに構築する。このジオイド・モデルは2kmメッシュで整備される予定だ。
発表資料
https://www.gsi.go.jp/buturisokuchi/airbornegravity_start.html
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