オープンデータの活用で地域課題の解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2024」キックオフ・イベントが開催
アイデアソンやハッカソンなどの開催でコミュニティを形成
地域課題の解決を目的に、イベントやコンテストを通じてオープンデータや活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2024(UDC2024)」のキックオフシンポジウムが7月3日、東京・駒場の東京大学駒場第2キャンパスおよびオンラインでのハイブリッドで開催された。
UDCは2013年度から始まったプロジェクトで、社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)および東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)、東京大学生産技術研究所(IIS)、東京大学デジタル空間社会連携研究機構(DSS)が主催している。2024年度のプロジェクトのスタートを宣言する今回のイベントには、UDCの全国各地の拠点で活動する自治体関係者やNGO関係者、エンジニア、研究者、プランナーなど幅広い人々が参加した。
初めに、UDCの実行委員長を務める東京大学空間情報科学研究センター 教授/AIGID代表理事の関本義秀氏が本年度のUDCの趣旨説明を行った。
UDCは、地域課題の解決を目的に、各地域での年間を通した持続的なイベント開催と一般参加型によるデータ活用のコンテストを融合させた“コミュニティ形成型・コンテスト”の取り組みで、コンテスト賞金総額は200万円以上となっている。地域拠点は公募による活動計画書を提出することで、都道府県ごとに1カ所が認定され、活動経費として合計10万円まで支援を受けられ、年間を通じた各種イベントの開催により持続的なコミュニティの形成や成長を目指している。
関本教授は、「アイデアソンやハッカソンを開催したからといっていきなり地域課題が解決するわけではありませんが、このような活動によって目の前の課題を1つでも2つでも解決していくことが大事だと考えています。UDCの開始当初は、地域課題を解決するコミュニティ形成そのものが大事な時期で、徐々にシビックテックの考え方は普及してきたかと思いますが、具体的なノウハウについては地域格差が開きつつあり、そこを埋めることが重要だと思います。今はコロナ明けでリアルな活動が復活している状況で、コミュニティ作りをさらに深めていく必要があると思います」と語った。
UDCは2023年度までの第2期が終わり、2024年度からは第3期となる。第2期に引き続き、第2期でも「道路・交通」「河川・港湾・上下水道」「まちづくり・都市計画」防犯・防災」「医療・健康」など10の特定テーマを定めて活動し、年度ごとに重点分野を決めて関連機関や関連学会との連携も進めていく方針としている。
2024年度の重点分野は「河川・港湾・上下水道」「生活・分化・地域アーカイブ」の2つで、重点分野についてはコンテストにおいて優遇措置を受けられる。なお、昨年までは行われた重点分野への一律の賞金加算については今年は行われない。このほか、特別賞として「BODIK賞」「GTFS賞」「GBFS賞」の3つが用意される。
なお、2024年度の地域拠点は南北海道、岩手、宮城(2拠点)、山形、福島、埼玉、千葉、神奈川、新潟、長野、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、京都、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、山口、徳島、福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島の28道府県で、これらの拠点ではシンポジウムやワークショップなどさまざまなイベントが開催される予定だ。
関本教授は、今年DSSで立ち上げた「シビックテックデザイン学創成寄附研究部門」についても説明し、「シビックテックの体系化や人材育成プログラム、国際動向を踏まえた上で情報発信も増やしていき、そうすることでアーバンデータチャレンジにもフィードバックされ、活動を促進するきっかけにもなると思いますので、どうぞよろしくお願いします」と語った。
第1部ではこのほかに、東京大学大学院情報学環・准教授 澁谷遊野氏によるシビックテック・デザイン学創成寄付研究部門の説明や、一般社団法人コード・フォー・ジャパン代表理事の関治之氏による「デジタル公共財」に関する講演、一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)電子情報利活用研究部 グループリーダの松下尚史氏による地域課題解決をテーマとした講演も行われた。
第2部では、UDCの地域拠点によるこれまでの活動報告および2024年度の取り組みなどの発表が行われた。冒頭では宮城ブロックによる発表が行われた。宮城ブロックには、UDCの拠点として石巻拠点と登米拠点の2カ所があり、イベントの際には協力して開催している。同ブロックはUDC2023でベスト地域拠点賞を獲得したため、UDC2024の中間シンポジウムが秋に開催される予定だ。
中間シンポジウムでは、東日本大震災から13年経ったことをテーマとする予定で、改めてこの13年で宮城のデータ活用やコミュニティの形成がどのように変わったのか、ということについて参加者とともに考えていきたいと考えている。会場は正式には未定だが、石巻での開催を予定している。
このほか、千葉や岩手、佐賀、広島、長崎、岐阜など各地域拠点による活動報告や2024年度の取り組みの紹介が行われた後、データ提供・支援拠点である国立国会図書館や九州科先端科学技術研究所、日本バス情報協会や、UDCの協力団体である一般社団法人コード・フォー・ジャパンなどによる発表も行われた。
UDCは今後、2024年度末にかけてコンテストの開催に向けてさまざまな取り組みを全国各地の拠点で実施する予定で、2025年1月末頃にかけてコンテストの作品募集が行われ、年度末のファイナルステージにて審査結果が発表される予定だ。
アーバンデータチャレンジ
http://urbandata-challenge.jp/
※記事中画像はキックオフイベントYouTube Live画面キャプチャより
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