オープンデータを活用した地域課題解決の取り組みを表彰する「アーバンデータチャレンジ2025」ファイナルステージが開催

オープンデータを活用した地域課題解決の取り組みを表彰する「アーバンデータチャレンジ2025」ファイナルステージが開催

地域の課題解決を目的として、オープンデータや活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2025」(主催:社会基盤情報流通推進協議会、東京大学生産技術研究所、東京大学空間情報科学研究センター、東京大学デジタル空間社会連携研究機構、アーバンデータチャレンジ2025実行委員会)のファイナルステージが2月21日(土)、東京大学駒場リサーチキャンパスおよびオンラインのハイブリッドで開催された。

アーバンデータチャレンジ(UDC)は、「データの力をまちの力に」をキャッチコピーとして、地方公共団体発のオープンデータや社会インフラに関する情報収集・情報配信の環境を整備して、データを活用したツールやアイデアを作品として仕上げるプロジェクト。全国の都道府県単位で地域拠点を認定し、ワークショップなどのイベント開催を通じて持続的なコミュニティの形成・成長・横展開に取り組むことを目的としており、地域拠点の活動によって創出されたアプリケーションやデータ、アイデアなどを表彰するコンテストも行われる。

今回のファイナルステージは今年度の取り組みを締めくくるもので、コンテストに応募された作品の中からファイナルステージに進出した作品の発表が行われ、最終的に応募された作品の中から最終審査会により優秀作品を決定した。

作品発表に先立って、UDC2025実行委員長を務める東京大学空間情報科学研究センター長の関本義秀教授が挨拶し、本年度の取り組みやコンテストの応募状況などについて説明した。

UDCでは様々な分野で課題を掘り下げていくために、「道路・交通」「産業・観光」など10の分野を設置し、重点分野を毎年決めて各業界と連携しながら進めている。2025年度の重点分野は「住宅・土地・公園・公共施設」および「防犯・防災」で、重点分野に取り組んだエントリー作品については審査が考慮される。

2025年度の地域拠点は22となり、5つの高校や大学との連携も行われた。コンテストの応募作品数は169作品で、重点分野の「住宅・土地・公園・公共施設」と「防犯・防災」に加えて、「生活・文化・地域アーカイブ」の分野への応募も多かった。また、学生が代表者となっているチームは94件(全体の55%)で、プロジェクトに学生が参加しているチームを合わせると107件(62%)と多くの割合を占めている。受賞作品は以下の通り(角括弧内はチーム名)。

【一般部門・金賞】

■ちゅーりんうぉっち
[ITソルーション室]
https://churin-watch.vercel.app/

浜松駅周辺の駐輪場の混雑情報を共有するためのアプリで、行政には駐輪場のデータを提供して意思決定の支援も行う。駐輪場にはAIカメラを設置して駐輪されている自転車の台数を推論し、そのデータをクラウドに送信して地図上に表示する。収集したデータをもとに行政向けのデータウェアハウス(DWH)とBIツールを作成し、データの利活用をサポートする。他のアプリに利用可能なデータ形式での出力も行える。画像認識モデルはYOLOを使用し、アノテーション済み画像を使ってファインチューニングを図り精度の高い独自モデルを作成した。駐輪場への設置物は防水ケースにRaspberry Piとカメラ、ポケットWi-Fiを搭載したもので、プライバシー情報にも配慮してクラウドにはメタデータのみを配信している。現在、社会実装に向けて浜松市との協議を進めている。

【一般部門・銀賞】

■通報しに行っちゃお!言っちゃお!~若者の社会参画の促進~
[浜松の星々]
https://public.tableau.com/app/profile/hamamatsu.deta/viz/_17325136923860/1

若者が街を歩いて道路の損傷を発見して通報することで社会参画を促す取り組みで、高校生が専用の識別タグ「SK」を入力してLINEで通報することにより、浜松市土木部がデータを集約して補修対応を行う仕組みを作った。2024年10月初旬に全校生徒に説明会を実施し、その後の1カ月間で通報と集計を行った上でTableauのダッシュボードに可視化した。事後アンケート調査によると、通報の種別については「舗装・白線」が26件と多く、通報箇所は広範囲に広がったが、アンケート結果により日没後は損傷箇所が確認できないという声が寄せられたため、2025年度は明るい時間が長い夏に実施することにした。また、他校にも声をかけて実施し、広域展開が可能なモデルであることを検証した。

■3D-BW(3D Break-Water Simulator)
[Coast Guardians]

消波ブロック(海岸や河川などの護岸を目的としたコンクリートブロック)の据え付けを練習できるシミュレーターで、専門家の設計図に基づいて消波ブロックと消波工(消波ブロックを集めて作った堤防のようなもの)の3Dモデルを3D-CADで作成し、ゲームエンジンのUnityを使って開発した。シミュレーターはゲームコントローラーやジョイスティック、キーボードなどで操作することが可能で、釣り方の再現や空隙率の計算などを行える。完成したシミュレーターを展示会で体験してもらったところ、87%の人から建設業界に有用であるという回答を得た。

■クイズでつなぐ石川のまち
[チーム金工大]
https://ifparks.com/

公共施設や公園のオープンデータを活用して、「遊び」を通じて地域を知ることができるアプリで、クイズやまち探検を楽しみながら身近な公共施設・公園を知ることができる。最大4人でリアルタイムに対戦できる「まちつなぎクイズ」、気軽に1人で遊べる「チャレンジモード」、実際に公共施設・公園を訪れてもらうための「まち探検モード」の3モードを用意しており、ユーザー作問機能やレポート機能、初心者向けガイド機能も搭載する。また、自治体向けの分析機能も備えており、クイズ回答結果から認知率を自動的に算出・可視化することが可能で、年代別の利用傾向などを可視化できる。

■遊びを加えた山の危険度認識と豪雨災害に向けた避難意識の向上策
[井口台の危険度可視化による防災意識向上班]

広島県は全国でも土砂災害警戒区域等の指定数が最も多いのにもかかわらず、土砂災害警戒区域内に居住する人の避難率が低く、避難意識が低いことが課題となっている。とくに広島市の井口台はほぼ全域が土砂災害警戒区域であり、高齢者が迅速に避難することが難しいため、早めの避難が必要と考えた。学校における避難訓練は土砂災害を対象とした訓練が少なく、訓練を繰り返すうちにマンネリ化するため、遊び要素を採り入れることで知的好奇心を喚起し、自主的に情報を採り入れられる仕組み作りとして、Doboxの地形データなどを活用し、ドローンを用いた地形測量によるリスクの可視化と情報共有、3Dプリンタを用いた模型での土石流実験、マインクラフトを用いた避難訓練の3つの取り組みを行った。

■Live Shibuya Digital Twin:ライブデータ×3D×VRによる都市状況可視化と生成AIによるリアルタイム世界改変
[東大新領域PRCチームC]

渋谷スクランブル交差点をVRでリアルタイムに再現し、洪水被害の発生や青信号の点灯時間の変更、怪獣の出現など様々な世界改変を行えるようにした。公開されている渋谷のライブカメラから、自動車用信号や歩行者用信号、電車の走行状況などリアルタイムに情報を抽出して、3Dのバーチャルツインを構築した上で、生成AIでリアルタイムにコードを生成して実行することで世界を改変し、VR上で体験できる。洪水発生ではPLATEAUの浸水想定データをもとに水面を作り、信号が消えて危険である状況をAIが可視化する。このシステムを活用することで、都市計画においてアイデアをすぐ形にできるほか、安全シミュレーションや訓練なども行える。

【一般部門・銅賞】

■和算を嗜む-ダンジョンRPG
[チームS]
https://linkevery2s.github.io/wasan/

日本で独自の発展を遂げた「和算」の世界観をRPG(ロールプレイングゲーム)のようなUIで体験できるウェブアプリ。国立国会図書館デジタルコレクションや文化財デジタルコンテンツ、文化庁などのオープンデータを使用し和風柄のデザインを採用している。ダンジョン内のマーカーをタップすると、江戸時代を代表する様々なキャラクターが和算やその時代の特徴について教えてくれる。

■九州元気マップ
[吉村一夫氏]
https://kyushu-genki-map.app/

無料興行を行っているNPOプロレス団体「九州プロレス」の価値を、オープンデータを使って可視化するウェブアプリで、実際の来場者数に基づいて地域の経済効果を定量的に試算できる。BODIK API(自治体オープンデータ)とも連携し、自治体ポリゴンや観光・文化財・イベント情報などを取得して地図上に反映することが可能で、経済波及エリアを特定できる。データ未整備の自治体は地図上が空白となるため、自治体がオープンデータの整備を進める上でのインセンティブにもなる。また、人の集積と消費行動をヒートマップ化することにより、「どこに熱があるか」が一目瞭然となり、赤いエリアをつなぐことで自治体を越えた観光ルート開発や広域連携の指標にもなる。また、試合動画を地図上に紐付けることで再訪意欲の喚起にもつながる。

■3Dで体験する次世代インフラツーリズムとメンテナンス教育ツール
[Voxel Infra Lab(ボクセルインフララボ)]

ゲーム感覚で社会インフラを学べる体験ツールで、3次元空間を一定サイズのボクセルで区切って固有のIDを付与する「空間ID」を利用して、マインクラフトと連動して建設現場の着工から完了までをボクセルで再現する。地図上で現場情報を選択すると、そのボクセル空間に入り込むことが可能で、空間内を自由に動き、ボクセルを触って構造物情報や点検情報を確認できる。これにより建設技術のエンターテインメント化が可能となり、子供たちがゲーム感覚で楽しみながら外壁調査や補修部の修復、塗装などを体験できる。

■選挙中じゃないときも、議員の「日々の活動」や「地域の問題や未来についてどう考えているのか」がわかる“さいたまのせいじ(政治)見える化”プロジェクト
[さいたまのせいじ(政治)見える化プロジェクトチーム]
https://n-kei.github.io/saitama-council-app/

市議選の投票率が低いさいたま市において、投票する際の判断材料として市議の4年間の実績データを市民に提供するアプリを開発した。3つの柱として、「大宮区の再開発」「岩槻区の人口減少」など地域課題で検索できる機能や、過去4年間の質問・低減を要約する機能、発言回数・内容と活動実績をスコアリングする機能などを搭載する。データソースはさいたま市議会会議録や政策活動費報告書、ネット口コミおよびSNS投稿などのオープンデータを使用した。

■デジタル版「菊池ふるさとかるた」
[菊池ふるさとかるたデジタル化プロジェクト25]

菊池市(熊本県)の郷土かるたである「菊池ふるさとかるた」をデジタル化し、位置情報と連携させることで世代を超えて活用できる新しい共同学習ツールとして再構築に取り組んだ。デジタル化によりいつでも楽しく学ぶことが可能となり、地図との連携により読み札の文化財や史跡を地図上ですぐに確認することが可能となる。作業工程は、原画から読み札と取り札を取り出して、自作アプリを使って現地で位置情報を収集した。完成したアプリでは、レベルを選んでかるたで遊べるほか、史跡や文化財を巡る菊地探訪マップやルート検索、ジグソーパズルなどを楽しめる。

■広島県インフラマネジメント基盤Dobox等で樹園地の持続可能性を考えてみた・・・
[RDC 広島2025]

広島県が提供するインフラマネジメント基盤「Dobox」を活用して、樹園地の荒廃プロセスについてオープンデータを用いた空間解析を行い、機械学習による予測モデルを検討した。予測結果をもとに「耕作」「荒廃」「活用候補地」の3つに分類して可視化し、抽出した範囲を目視で確認したところ、近年の荒廃を的確に抽出したケースと、樹体の成長を管理不足と誤認したケースの双方が混在していることが確認され、目視判断は必要であるものの候補農地のおおよその抽出はできることがわかった。

■のぼレコ
[のぼレコ]
https://figma.fun/KS1TEY

毎日坂や階段を上った高さを自動的に累積記録するアプリで、有名な山やランドマークの高さと比較することで日々の上りを達成感のあるポジティブな体験として変えることを目的としている。スマートフォンのセンサーを利用してバックグラウンドで上った高さを自動で計測し、ホーム画面で今日の達成状況と次の目標までの進捗も確認できるようにする。移動速度をもとにエレベーターや乗り物での移動を判別し、計測から除外する機能も搭載する。到達した山やタワーなどのランドマーク施設を達成リストとして一覧できるようにするとともに、コミュニティでコメントなども共有できる。自治体や健康関連企業との連携や、坂や階段の上にある企業とコラボレーションを図るなどすることで、地域経済との活性化にも貢献できる可能性がある。

■交通安全オープンデータを活用した総合オンラインマップの構築と事故対策支援への応用
[GISAIRラボ]
https://safety-map.gisair-lab.com/

OpenLaywesを使って警察庁が公開する交通事故データと、日本道路交通情報センター(JARTIC)が提供する交通規制データを同時に可視化できるWebGISツール「交通安全総合マップ」を構築した。開発にあたっては交通規制データをもとに内容の妥当性を確認した上で可視化用データセットを整備した上で、愛知県を対象としたデモツールを開発して交通事故と交通規制を統合的に可視化するWebGISツールを構築し、関係機関の協働のためのプラットフォームとして位置付けて様々な活用方法を検討した。

■迷わないバスナビ
[清水怜一郎 氏]
https://reigreen016.github.io/busnavi/

GTFSデータをもとに広島市のバス案内サービスを開発した。画面左にバス乗り場のマップを表示し、目的地に行くバスを点滅させて表示するとともに、画面右に次に発車するバスの時刻と乗り場も表示することで、路面電車の案内表示のようなわかりやすさを目指した。右下には詳細なバス情報を掲載し、発車3分前になると黄色く点滅して知らせるようにした。今後はスマートフォンでバス乗り場を案内できるようにするとともに、GTFS-RTでリアルタイムの通過予定時刻を反映できるようにしたいと考えており、バスサイネージの設置も目指している。

【ビジネス・プロフェッショナル部門・最優秀賞】

■~都市居住環境を高速でデジタル化~ 生成AI駆動型三次元建物モデリングシステム
[デジタルシティ・クリエーターズ]

生成AIモデルと低コストな衛星画像を組み合わせることにより数千棟の建物モデルを短時間かつ低コストで生成した。建物モデルは三角形の組み合わせで作成し、建物ごとに自然に生成できるようにした。建物モデルを安定的に生成できるように、外観を評価する指標として「Building Mesh Quality Index(BMQI)」も作り、理想的な概観になるまで繰り返して生成できるようにした。生成する際には6種類の屋根タイプを設定し、PLATEAUのデータセットにある7万棟の建物データをモデルに学習させた。生成させた結果、1000m四方にある2400棟の建物を数十分で生成することができ、BMQIによる自動品質評価で合格率98%超えを実現した。このモデルはオープンソースとして公開しており、生成したモデルの評価も行える。

【ビジネス・プロフェッショナル部門・優秀賞】

■災害データ可視化サービス「DP Note」の開発
[チームS]
https://dpnote.netlify.app/index.html

災害を統計的に可視化するウェブアプリで、震度マップや降雨量の3D表示、WebGLを用いた立体的な可視化など様々な可視化を試みている。可視化した災害をカレンダー形式で掲載する機能や、災害名から調べられる機能を搭載するとともに、災害の体験談も掲載し、これから防災を学ぶ人や過去の大災害を知らない人でも、災害を自分ごととして捉えてもらえるように配慮した。

■水のみち散策
[青島英和 氏]
https://suidomichi.livlog.xyz/

全国に点在する水道みち(上水道を埋設した暗渠)をひとつ地図にまとめるプロジェクトで、データ作成にはGoogleマイマップを使用した。水道みちの作成は公開情報や航空写真、地図などを確認し、道路形状や周辺状況から判断しながら手作業で線を引いた。現時点で22本の水道みちをデータ化している。1本あたりの距離が長く、線形は曲がりくねっており、山間部や住宅地を横断するため作業負荷は非常に大きく、他の人が再現しづらいため、調べ方や判断の基準、作成・整理方法をNotionに手順書として整理した。また、Googleマイマップから得られるKMLデータはWebで扱いにくく再利用しづらいため、GeoJsonに変換するツールを自作し、変換したデータをオープンデータとして公開した。

■特殊橋における3次元モデルを活用した維持管理手法
[石山恭行 氏]

橋梁の中でも不静定次数が高いラーメン橋や、全体座屈などが生じる可能性のあるアーチやトラス橋などの特殊橋について、点群による3次元モデルを活用した維持管理手法を試行した。ドローンの空撮映像をもとに点群による3次元モデルを作成することで橋全体の系変位を把握することが可能となり、精度検証も実施して最大誤差は8mm程度(1%未満)という良好な結果となった。今後の展望としては、3次元モデルによって橋全体系変位を定量的に把握することが可能となり、閾値の設定により交通可否の判断も容易となる。また、点検困難部が解消されて適切な健全性評価が可能となることも期待される。

■子ども統計教室「まちケア・ステップ」
[株式会社まちケア]
https://step.machicare.co.jp/

子どもたちに統計やデータの大切さを伝えるショッピングセンター常設の統計教室で、データソムリエ(データ活用の支援者)が常駐し、子ども向けプログラム「DATAKIDS(データキッズ)」を利用してデータを見る力や自分の言葉で伝える力を養うとともに、オープンデータを活用した「 防災マップ」により子供たちが防災を自分ごととして考えるきっかけづくりを提供する。2025年度には「夏休み統計グラフ学習会」を開催し、延べ79名の親子が参加して期間中に4作品が完成して岡山県統計グラフコンクールへの応募につながり、入賞作品も輩出した。

このほかに、特別賞として「GTFS賞」や「BODIK賞」、「JACIC賞(社会基盤情報標準化委員会特別賞)」、「デジタルツイン地域貢献賞」、「土木学会賞」、「実行委員会特別賞」、「学生奨励賞」などの表彰も行われた。

また、今年の活動で最も優れた地域拠点に贈られる「ベスト地域拠点賞」には長崎拠点が選ばれた。ベスト地域拠点賞を受賞した拠点は翌年度のUDCにおいて中間シンポジウムの会場となるため、UDC2026の中間シンポジウムは長崎で開催される予定となった。

※記事中画像はキックオフイベントYouTube Live画面キャプチャより