鎌倉で11年ぶりに開催!OpenStreetMapの地図作りイベント「鎌倉マッピングマーティー」レポート

鎌倉で11年ぶりに開催!OpenStreetMapの地図作りイベント「鎌倉マッピングマーティー」レポート

フリーでオープンな地図データを市民の草の根の力で作る世界的な共同作業プロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」では、マッパー(地図作成者)が集まってフィールドを歩く地図作成イベント「マッピングパーティー」が全国さまざまな場所で開催されている。マッピングパーティーは、まだOSMの編集をしたことのない初心者がマッピングを学ぶ機会であり、マッパー同士が交流を深める場でもある。また、バリアフリー情報やAEDの設置場所など、特定のテーマを決めて実施されるマッピングパーティーもあり、同じ課題意識を持つ人に巡り会う機会にもなる。

日本では2008年3月に東京の巣鴨・駒込エリアで最初のマッピングパーティーが開催された。続いて5月と7月に、2回目および3回目のマッピングパーティーとして開催された地が鎌倉で、今回は11年ぶりに同じ街で開催されることになった。

鎌倉駅にてOSMの編集ツールについて簡単なレクチャーを行った

同イベントの主催者の1人であり、日本におけるOSMプロジェクトの支援組織「OpenStreetMap Foundation Japan(OSMFJ)」の代表理事でもある三浦広志氏によると、このイベントを企画したのは、OSMの今後について話し合う会合「OSMトウキョウ ミートアップ」(2019年5月開催)がきっかけだったという。

「マッパーを増やす方法についてみんなで意見を出し合ったところ、『やはりマッピングパーティーを開催するのが一番良いのではないか』という意見が出て、どんどん開催していこうという話になり、それなら11年前に開催した鎌倉でもう一度やってみようと思いつきました。11年前に実施したときも、日本でOSMの活動がスタートしたことを世界にアピールするために、観光地である鎌倉を選びました。今回についても、来年の東京五輪の開催を前に、観光地で実施するのは意味があることだと思いました」と三浦氏は語った。

当日は鎌倉駅に集合し、ワークショップ会場のある稲村ヶ崎駅方面に向けて、16人の参加者が、山方面を歩くルート、江ノ電に沿って歩くルート、海沿いを歩くルートの3班に分かれてマッピングを行った。

マッピングに際しては、「OSM Sketch」や「Go Map!!」、「OsmAnd」などのアプリや、ウェブブラウザ上で使える編集ツールを使ってカフェやレストランの店名や営業時間などを入力したり、OSMの地図メモ機能(note)を使って投稿された疑問点などをチェックしたりした。また、施設の位置や道路の形状が間違っている箇所や、電話ボックスの位置などについてもチェックして記録や編集を行った。

電話ボックスの位置なども登録していく

営業時間を調べるために、店先で立て看板などを確認していると、中から店員が出てきて声をかけられることもあり、そのようなときは店員と積極的にコミュニケーションしながら必要な情報を入手するとともに、地元の人との交流を楽しむ。

このようなときに役立つのが、OSMの概要を紹介した手のひらサイズのリーフレットだ。OSMについて説明するときは、相手へ最初にこのリーフレットを渡した上で、OSMの地図作成がボランティアで行われている活動であり、世界中で行われているプロジェクトであることなどを紹介すると話が伝わりやすい。

飲食店などは営業時間や定休日が変わることも多く、新規開店や閉店の場合もあるため、情報をいかに更新していくかが課題となる。このような場合は地元の住民に直接更新してもらうのが一番であり、OSMの周知を図りマッパーの数を増やしていくためにも、このような普及活動は大事な意味を持っている。

店の人とコミュニケーションしながらマッピング
OSMの概要を伝えるためのリーフレットを用意

このほか、参加者の中には、ウェアラブルカメラや全天球カメラで撮影し、ストリートビュー作成サービス「Mpaillary」に投稿する人もいた。

フィールドワークの終了後は、稲村ヶ崎駅近くのレンタルルームに参加者が集まり、ワークショップが実施された。ワークショップでは、各班でどのようなマッピング活動を行ったかを紹介した上で、Mapillaryでのマッピングや、スタンドアロンのOSM編集ツール「JOSM」、スマートフォン用の編集ツールなどについて紹介が行われた。三浦氏は最後に挨拶し、「皆さん、今日学んだことを活かして、ぜひマッピングを継続していただきたいと思います」と締めくくった。

ワークショップを実施

11年前に鎌倉で開催したマッピングパーティーを振り返り、昔と今のマッピング事情の違いについて、三浦氏は以下のように語った。

「当時はスマホも普及していなかったし、単体のGPS受信機を使わなければマッピングができませんでしたが、今はOSMのスマホアプリがとても充実しているので、色々なレベルに合わせて簡単にマッピングできるようになったという点は大きく変わりました。さらに、昔は建物の形などは足で稼いで描いていたのが、今は国土地理院のデータや航空写真など精度の良い資料をトレースできるようになり、効率よくマッピングできるようになっています。ただし、マッピングを通じて街を知ったり、歴史を学んだりする楽しさは昔とまったく変わりません。そのような良さを大事にしながら、今後もマッピングパーティーをどんどん開催していきたいと思います」(三浦氏)

OSMのマッピングパーティーは日本各地で開催されており、いつどこで開催されるかは「OpenStreetMap Japan」のサイトで情報を入手できる。興味のある人は一度参加してみてはいかがだろうか?

OpenStreetMap Japan
https://openstreetmap.jp/