公共データの活用で地域課題の解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2022」キックオフ・イベントが開催

公共データの活用で地域課題の解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2022」キックオフ・イベントが開催

実行委員長の関本義秀氏(画面右)

地域課題の解決を目的にイベントやコンテストを通じて公共オープンデータや活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2022(UDC2022)」のキックオフシンポジウムが7月1日、東京・駒場の東京大学駒場第2キャンパスおよびオンラインでのハイブリッドで開催された。

UDCは2013年度から始まったプロジェクトで、社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)および公益社団法人土木学会、東京大学空間情報科学研究センター、東京大学生産技術研究所、東京大学デジタル空間社会連携研究機構が主催している。2022年度のプロジェクト開始を宣言するこのイベントには、UDCの全国各地の拠点で活動する自治体関係者やNGO関係者、エンジニア、研究者、プランナーなど幅広い人々が参加した。

初めに、UDCの実行委員長を務める東京大学空間情報科学研究センター 教授/AIGID代表理事の関本義秀氏が本年度のUDCの趣旨説明を行った。

UDCは、地域課題の解決を目的に、各地域での年間を通した持続的なイベント開催と一般参加型によるデータ活用のコンテストを融合させた取り組みで、コンテスト賞金総額は200万円以上にのぼる。全国の都道府県ごとに地域拠点を認定し、年間を通じて各種イベント開催を実施して、持続的なコミュニティの形成や成長を目指している。

UDCは2019年度から第2期がスタートしており、「道路・交通」「河川・港湾・上下水道」「まちづくり・都市計画」「農業・林業・漁業」「産業・観光」など10の特定テーマを定めて活動している。年度ごとに重点分野を決めて関連機関や関連学会との連携も進めており、2022年度の重点分野は「住宅・土地・公園・公共施設」「医療・健康」の2つとなっている。重点分野についてはUDCがウェビナーを開催するほか、コンテストにおいて賞金も加算される。

10の特定テーマを設定

関本氏は9年目となる今年度において目指したいこととして、「コロナとの共存の時代に向けて、地域づくりがどう変わっていくかを考える」「これまでの実績をもとに“デジタル田園都市”や、地域DXを進めていくコミュニティのつながりを深くする」「地域間をつなぐメンターや伝道師の顕彰」、「デジタルシティサービスやMy City Forecastなど具体的なツールの紹介」の4点を挙げた。

都市の3Dデジタルツイン環境を提供する「デジタルシティサービス」
富山県南砺市の公共施設を可視化する「南砺市公共施設マネジメントシステム」

2021年度はオンラインを中心に延べ76回のイベントが開催され、約1,800名が参加した。2022年度の地域拠点は南北海道、岩手、福島、埼玉、東東京、神奈川、新潟、石川、富山、長野、岐阜、静岡、愛知、京都、兵庫、奈良、和歌山、岡山、山口、高知、福岡、佐賀、熊本、大分、鹿児島、沖縄の27都道府県で、これらの拠点ではシンポジウムやワークショップなどさまざまなイベントが開催される予定だ。

また、昨年度に引き続いて「土木学会インフラデータチャレンジ2022」との共同開催による連携イベントも実施し、コンテスト応募が利用可能なデータはUDCのウェブサイトおよび「G空間情報センター」を通じて提供する。

「コロナ禍により拠点活動や作品応募数は少し減ってきましたが、オンライン開催により県間の格差が解消されたり、社会人だけでなく学生の応募が増えてきたりしてきているので、より広範な地域課題への対応が求められていると考えています。今年はコロナ禍が収束しつつある状況なので、もう少しフィジカルイベントも増えればいいなと思っていますし、来年は節目となる10年目なので、本年度で色々な経験をした上で次の期を迎えたいと考えています」(関本氏)

第1部ではこのほかに、デジタル庁の平本健二氏や荒川下流河川事務所の荒川佳子氏、土木学会インフラデータ・サービス共創研究小委員会の榎本真美氏による講演も行われた。

第2部では、UDCの2021年度の活動報告および2022年度の取り組みなどの発表が行われた。最初はUDC2021でベスト地域拠点賞を獲得した岐阜ブロックの代表として、シビックテックコミュニティ「CODE for GIFU」の石井哲治氏が発表した。

岐阜ブロックの活動は、公益財団法人ソフトピアジャパン、岐阜県、そしてCODE for GIFUによる産・官・民の連携で2016年からUDCに参加している。2021年度は「伝統産業×IT」をテーマに、フィールドワークやワークショップ、ロゲイニングアプリの開発などを通じて美濃焼の地域ブランディングに取り組んだほか、オープンデータ活用事例として九谷焼での取り組みも学んだ。


CODE for GIFUの石井哲治氏(画面右)

2022年度の岐阜ブロックは、昨年に引き続いて「伝統産業×IT」をさらに掘り下げて、土と釉薬のデータ化などに取り組む方針。また、今年はタイル名称が統一されてから100周年となる年ということで、これを記念した取り組みや、陶芸体験において窯で土器を焼くといった活動も行うとしている。また、秋には大垣市のソフトピアジャパンにてUDCの中間シンポジウムを開催する予定だ。

このほか、各地域拠点による活動報告や、データ提供・支援拠点のひとつである国立国会図書館による発表も行われた。UDCは今後、2022年度末にかけてコンテストの開催に向けてさまざまな取り組みを全国各地の拠点で実施する予定で、2023年1月末頃にかけてコンテストの作品募集が行われ、年度末のファイナルステージにて審査結果が発表される予定だ。

アーバンデータチャレンジ
http://urbandata-challenge.jp/

※記事中画像はキックオフイベントYouTube Live画面キャプチャより