SotMやFOSS4Gの参加レポートを発表、マップボックス・ジャパンとOSMユーザーの交流イベント「mapbox/OpenStreetMap meetup」第9回レポート

SotMやFOSS4Gの参加レポートを発表、マップボックス・ジャパンとOSMユーザーの交流イベント「mapbox/OpenStreetMap meetup」第9回レポート

地図サービスや地図コンテンツの開発プラットフォームを提供するMapboxと、フリーでオープンな地理空間情報を市民の手で作るプロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」のコミュニティとの交流イベント「mapbox/OpenStreetMap meetup」の第9回が10月28日、オンラインにて開催された。

同イベントはMapboxの日本法人であるマップボックス・ジャパン合同会社が青山学院大学の古橋研究室とNPO法人CrisisMappers Japan(災害ドローン救援隊DRONEBIRD/JapanFlyingLabs)、OSGeo.JP、OpenStreetMap Foundation Japan(OSMFJ)の協力により開催するもので、9回目となる今回は「コミュニティ連携で見えてくる地図の未来!」と題して、イタリアのフィレンツェで行われたOSMやFOSS4Gの国際イベントの報告や、9月に開催されたサイクルイベント「ツール・ド・東北」でマップボックス・ジャパンが開発したリアルタイムマップなどについてさまざまな講演が行われた。

■イタリアで行われたOSMの国際カンファレンス

冒頭ではマップボックス・ジャパンのアンバサダーを務めている青山学院大学の古橋大地教授による挨拶が行われ、続いて古橋研究室メンバーの日向野邦春氏による、OSMの国際カンファレンス「State of the Map 2022 Firenze」に関する報告が行われた。

SotM 2022の会場の様子(左)と、古橋大地教授(右上)、日向野邦春氏(右下)

State of the Map(SotM)とはOSMのマッパー(地図製作者)や、OSMの地図データを活用するエンジニアや研究者などが参加する国際イベントで、会場ではOSMに関する情報交換や交流、OSMを使った成果発表、企業による採用活動などが活発に行われる。IT企業や地図会社などさまざまな企業がイベントを支援しており、スポンサーによる展示ブースも設けられる。

日向野氏はイタリアのフィレンツェで行われた今回のSotMで印象に残った発表として、フランスのOpenIndoor社による取り組みを紹介した。OpenIndoorはBIMやCADなどの建築データをもとにインドアマップを生成してOSM上に表示するソリューションを展開しており、災害救助やARナビゲーションなどに活用されている。

OpenIndoorの発表

もうひとつの事例として、ハイデルベルク大学の地理情報技術研究所(HeiGIT)が発表した「Osome API」を紹介した。同APIは、OSM上に登録された建築物データの属性を調べることにより、エリアと期間を指定して施設の増減を可視化するAPI。HeiGITはOsome APIやMapSwipeなど、社会貢献性の高いツールを開発し続けており、日向野氏はこの発表に対する感想として、「自分もGISコミュニティに対してインパクトのあるツールを日本からリリースしたい。そのためには YouthMappersなどさまざまな組織が力を寄せ合ってHeiGITに追いつくような団体を作るべきではないかと感じています」とコメントした。

HeiGITの発表

■オープンソースの地理空間ソフトウェア「FOSS4G」の国際イベントも開催

続いて古橋氏よりオープンソースGISの開発者会議「FOSS4G 2022 Firenze」に関する報告が行われた。FOSS4Gとはオープンソースの地理空間ソフトウェアおよびそのコミュニティを意味し、毎年さまざまな国において国際カンファレンスが行われている。以下、古橋氏の発表の中から主要なトピックを紹介する。

FOSS4G 2022の会場の様子

・OSMのベクトルタイルをOpenMapTilesという形で公開する取り組みが進んでおり、自由度の高いCC0ライセンスで公開する方向で進んでいる。

・OSMのエディタ「iD」にAIの機械学習の技術を組み合わせて、衛星画像から自動的に道路中心線や建物の形を抽出する機能を搭載する新しいエディタ「RapiD」ver2.0 についてMeta社が発表。現在アルファ版として提供されており、正式版の公開も近い。

RapiDに関するMetaの発表

・Mapillaryによる発表では、同社が保有する大量の道路映像から信号など道路上にある構造物を自動検出する技術の向上について発表が行われた。

Mapillaryの発表

・航空写真の共有プラットフォーム「OpenAerialMap」ver2.0 の開発状況の報告が行われ、単なるデータを公開するツールから、よりデータの相互連携や分析がやりやすく改良されていることが紹介された。

・国連によるOSM活用の取り組みについて発表が行われた。UN Open GIS Initiativeの代表を務めるKyoung-Soo Eom氏が基調講演を行い、国連がオープンソースをどのように活用していくかということについて語った。

Kyoung-Soo Eom氏による基調講演

・3次元点群データを処理するためのツールに関する発表がいくつか行われた。クラウド向けに最適化して使いやすくする「COPC.io」が実装されたり、QGIS用のプラグインなどが公開されたりと、この分野の取り組みが進んでいる。

・FOSS4Gの国際カンファレンスは2023年、コソボ共和国で開催される予定。

■ライダーの現在地をリアルタイムに地図上で可視化

次にマップボックス・ジャパンの「リアルタイムマップ東北応援企画」プロジェクトメンバーが、宮城県女川町にて9月に開催されたサイクルイベント「ツール・ド・東北」で提供したリアルタイムマップの技術を紹介した。

マップボックス・ジャパンのスタッフ一同

「ツール・ド・東北」は、ヤフー株式会社(Yahoo! JAPAN)と株式会社河北新報社が、東日本大震災の復興支援および震災の記憶を継承していくことを目的に2013年から開催しているファンライドイベントで、3年ぶりの開催となる今年は約1500人のライダーが参加した。

Mapboxは同大会において、地図上でリアルタイムにライダーの位置を表示するシステムを開発し、一般に公開した。このリアルタイムマップでは各ライダーがどこにいるのかを検索可能で、リプレイで自由に見直すことも可能。2名のライダーによる走行動画のライブ配信も行ったほか、Twitterと連携して投稿を共有する機能や、視聴者が応援ボタンを押して盛り上がりを共有できる機能も搭載した。

リアルタイムマップ

ライダーの位置情報は大会の公式スマートフォンアプリと連携して取得し、リプレイ用に位置情報とタイムスタンプを記録する時系列データベースを構築した。アプリのテストは東京および女川町の現地にて行い、テストライダーによる走行テストやサーバー環境などを確認した。

今回の参加者は1500人と多数のため、地図上にすべてのライダーを同時に表示すると、どこに誰がいるのかわかりづらくなるため、ライダーを複数のグループに分けて、各グループの人数を表示するようにした。このように大会全体の状況把握を容易にした上で、検索されたライダーを追従し、特定のライダーの位置をすばやく把握できるようにした。

検索されたライダーをすばやく追従

また、応援ボタンではユーザーがボタンをクリックするたびにカウントアップするようにした上で、カウントの下一桁が0のときに花火が打ち上がるアニメーションが表示されるようにした。この仕組みはカウントアップが得意なredisというデータベースを利用して作成した。

応援ボタンを押すとカウントアップ

Twitterタイムラインの連携機能については、バックエンドから送られるツイートをタイムライン形式で描画した。バックエンドでは、臨場感を高めるためにTwitter Streamを利用して、ツイート後すぐに画面へ表示されるようにするとともに、Streamの接続が不安定になった場合に備えてJobでも定期的にツイートを取得するようにした。

ライダーの位置表示については、位置情報の補正などの複雑な処理はすべてバックエンドに任せて、フロントエンドは描画に専念させるようにした。バックエンドは同時接続数5000、ライダー数1500に耐えられるように冗長性とスケーラビリティを考えて設計し、バックエンドのサーバーが落ちてもフロントへの影響はほぼ無いようにした。また、どのような形状のコースにも利用可能な位置補正・予測アルゴリズムを採用した。このようなさまざまな工夫により、大会当日は大きなトラブルが起きなかったという。

同社は今回開発したリアルタイムマップの仕組みをオープンソースとして公開し、さまざまなスポーツのリアルタイム実況を提案する方針としている。

■12月に初のオフラインイベントを開催

このほか、マップボックス・ジャパンのコミュニティ支援の取り組みとして、今後のイベントの参加予定も発表された。12月3日(土)に兵庫県の加古川商工会議所にて開催される「State of the Map Japan 2022 in Kakogawa」のシルバースポンサーとして協賛し、講演も行う。

また、12月6日(火)・7日(水)に行われる地理空間情報のイベント「G空間EXPO」にブースを出展することに加えて、12月7日(水)の19時30分より東京・浜松町にて「mapbox/OpenStreetMap meetip」イベントも開催する。同社が設立して以来、初めてのオフラインイベントで、「メディアと防災」をテーマにさまざまな識者が登壇する予定だ。

マップボックス・ジャパン設立以来、初となるリアルイベントが開催

■URL
Mapbox Japan
https://www.mapbox.jp/
mapbox/OpenStreetMap meetup
https://mapboxjpmeetup09.peatix.com/
イベントの動画
https://www.youtube.com/watch?v=mNa0UFKfasM
State of the Map 2022
https://2022.stateofthemap.org/
FOSS4G 2022 Firenze
https://2022.foss4g.org/
リアルタイムマップ東北応援企画
https://www.mapbox.jp/community/tourdetohoku2022