オープンデータ活用で地域課題解決に取り組む「アーバンデータチャレンジ2020」ファイナルステージがオンラインで開催

オープンデータ活用で地域課題解決に取り組む「アーバンデータチャレンジ2020」ファイナルステージがオンラインで開催

実行委員長の関本義秀氏

地域の課題解決や魅力創出を目的にオープンデータやその活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2020 with土木学会インフラデータチャレンジ2020」(主催:社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)と公益社団法人土木学会、東京大学生産技術研究所、東京大学空間情報科学研究センター)のファイナルステージが3月13日、オンラインにて開催された。

アーバンデータチャレンジ(UDC)は、地方自治体発のオープンデータや社会インフラに関する情報収集や情報配信の環境を整備し、これらのデータを使用したツールやアイデアなどを作品として仕上げるプロジェクト。全国の都道府県単位で地域拠点を認定し、さまざまなイベントの開催を通じて持続的なコミュニティの形成・成長・横展開に取り組むことを目的としている。地域拠点の活動には誰でも参加することが可能で、このような活動を通じて生まれたアプリケーションやデータ、アイデアなどを表彰するコンテストも開催される。

同プロジェクトは2013年度にスタートし、2019年度からは土木学会と連携して「土木学会インフラデータチャレンジ」との共同運営として実施している。今回のファイナルステージは、1年間を通して継続的なチャレンジを行ってきた同プロジェクトを締めくくるもので、各地域拠点での活動を振り返るとともに、最終的に応募された作品の中から最終審査会を開催し、優秀作品を決定した。

はじめにイベントの実行委員長を務める関本義秀氏(東京大学生産技術研究所准教授)が挨拶し、本年度の取り組みやコンテストの応募状況などについて説明した。

UDCは2019年からセカンドステージへと進み、さまざまな分野で課題を掘り下げていくために、「道路・交通」「河川・港湾・上下水道」「住宅・土地・公園・公共施設」など10の分野を設置し、重点分野を毎年決めて、各業界と連携しながら進めていくことにした。2020年度の重点分野は「まちづくり・都市計画」および「教育・政治」の2つで、UDC主催でこの2分野に関するウェビナーを5回開催し、延べ約430名が参加した。

さらに、参加者の裾野を広げるため、ビジネスや学術分野のプロフェッショナルによる活動についても評価できるように、「ビジネス/プロフェッショナル部門(賞)」を新設した。

コンテストの応募作品数は155で、このうち約半数の74の作品が地域拠点開催イベントからの応募だった。今年の傾向としてはアプリケーション部門とアクティビティ部門の応募数が前年度に比べて大幅に増えたことに加えて、新設されたビジネス・プロ部門についても30作品の応募があった。

2020年度の作品応募の状況

続いて、UDC2020の一次審査通過作品のプレゼンテーションが行われた。今年度は「アプリケーション」「データ」「アイデア」「アクティビティ」の4部門が用意されており、一次審査を通過したのは15作品。これらの作品に対して参加者からの投票が行われ、投票結果および審査員による評価をもとに優秀作品が選出された。受賞作品は以下の通り。

【一般部門・金賞】

■ガタリコ

(チーム ガタリコ)
https://apps.apple.com/jp/app/%E3%82%AC%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%82%B3/id1538308049

新潟市に住む子育てで忙しい主婦のための生活情報アプリ。独自に構築したLOD(リンクトオープンデータ)の「越後データプラットフォーム」にデータを格納して配信している。データセットは天気予報や不審者情報、クマ出没情報、小学校の給食の献立情報、ゴミ出し情報、バス運行情報、休日・夜間診療、ママイベント情報などで、自治体と連携した上で不足データはデータスクレイピングにより集約している。新潟では、越後データプラットフォームを活用して新潟に関連するあらゆるデータを収集し、データプラットフォームを構築して利活用する取り組みを進めており、「ガタリコ」はその利活用事例のひとつで、今後も産官学が連携しながらデータの力でより豊かな社会を創っていくことを目指している。

【一般部門・銀賞】

■空き地活用戦略本部

(TAKETA空き地戦略本部)
https://public-plus.jp/cn2/pg71.html

大分県竹田市において、中心市街地において使われていないスペースを活用するプロジェクト。マッピングパーティーを開催して、アプリを使って空き地の状況を調査し、アプリで集めた情報をアナログの紙マップに落としてディスカッションを行った。その上で、これらの調査に基づき、具体的な空き地活用(ベンチづくり、空き地サウナ)などの活用を実践した。その実践手法を「空き地レシピ」として公開した。空き地活用を2カ月間、進めた結果、色々な人が空き地に立ち寄るようになり、これがきっかけでコーヒー屋もオープンした。このほか、竹田市において浄化槽の普及率が低いという課題を解決するため、浄化槽の普及状況をGISで可視化し、空き地に共同浄化槽を設置して1世帯あたりの金銭的負担を下げる取り組みも進めている。

■迷わず乗れるもん

(チームJin)

バスにおける混雑予測機能および出発時間の提案機能を、既存のアプリケーションにアドオンするサービスとして提供。バスの出入口に設置する乗降センサーによってバス停ごとの乗降客数のデータを取得し、混雑度の予測モデルを生成するとともに、バス停に設置したセンサーにより次のバス停での乗降客数をリアルタイムに把握して予測精度を向上させる。これにより、バス利用者は密を避けた分散乗車が可能となり、バス会社は天候や鉄道の人身事故の影響による急激な利用者増に対応できるようになる。また、混雑予測に加えて、GPSによる利用者の位置情報と、バスロケによるバスの位置情報を取得することで、運行状況から出発時間を算出して利用者に提案する。

■#すそのんエール飯ドライブスルー弁当市場 在庫お知らせサービス

(Code for SUSONO)
https://susononyell.glideapp.io/

ドライブスルー方式の弁当販売イベントにおいて、弁当販売所の在庫状況を購入希望者がリアルタイムに把握できるサービスを提供。開発には、活動を横展開できるように、無料で簡単に導入できるノンプログラミングツール「Glide」を活用し、Glideの情報を見た会場内の放送担当者がミニFMを通じてドライバーに在庫数を伝えた。導入のハードルを下げるため、スマートフォンだけで運用できる仕組みにしている。イベントでの取り組みは計2回実施し、車の誘導など実際のオペレーションの改善などと合わせて1回目の課題を解消した上で2回目の完成度を高めた。同サービスの利用者からは、「アプリで表示される弁当の在庫数を見て、急いで買いに来た」「イベント終了の情報が出ていたので家を出る前に行くことをやめた」といった感想が寄せられた。

■ミュージカルとデータでまちの魅力発信!「川崎シビックプライド」

(オープン川崎/Code for Kawasaki)
https://www.youtube.com/watch?v=ygp_a6HFgsc


まちの魅力をデータで説明し、競い合うイベント「川崎シビックパワーバトル」において取り組んだプロジェクト。川崎市に関する50のデータや事実を1180文字の歌詞にして4分40秒のラップ調の曲を制作し、市内で活動する学生中心のミュージカル団体「MPinK」が歌って踊ることにより、川崎市の魅力を伝える。撮影についてはブレーメン通り商店街が全面協力しており、商店街において交通整理をしながら撮影を行ったほか、川崎市役所やショッピングモール、音楽ホールなどさまざまな場所で撮影を行った。歌詞に出る人物・場所・物などをほぼすべて細かく映像化したPR動画を制作したほか、ミュージカルライブも実施した。この動画でシビックパワーバトルの全国大会に出場したところ、最優秀賞を受賞した。この動画はYouTubeでも一般公開している。

■東広島テイクアウトマップアプリ

(東広島テイクアウトプロジェクト)
https://durh4.glideapp.io/


コロナ禍における東広島市内の飲食店のテイクアウトサービスの応援を目的として開発されたウェブアプリで、マップ上のピンを選択すると店の詳細情報を見られる。ノンプログラミングツール「Glide」を活用することにより、6日間の短期開発で100を超える店舗情報が掲載された。2020年4月27日のリリース後は5,000人以上のユーザーが利用し、公開1カ月で88,000アクセスを超えた。東広島市、地域メディア、学生エンジニアの3者による共同開発事業で、トップ画面のマップUIやフードカテゴリの検索性、各店舗ページの情報配置などを短期間で開発することができた。

【一般部門・銅賞】

■富山県公認新型コロナウイルス感染症対策サイト

(寺田一世氏)
https://stopcovid19-toyama.netlify.app/

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) に関する最新情報を提供するウェブサイトで、富山県による公式情報と客観的な数値をわかりやすく伝えることにより、県内在住者や県内企業、富山県への訪問者などが現状を把握して適切な対策を取れるようにすることを目的としている。個人が制作したサイトにもかかわらず富山県の公認サイトとして運営しており、富山県に協力を依頼してAPIをやりとりするための仕様を共同で整備した。オープンソースである東京都版をベースに、富山県版独自の図表を追加して視覚的に情報を提供してほか、多言語表記の整備や高齢者向けの印刷用ファイルの制作など、利用者からの要望に応じて柔軟に対応している。

■QGISを用いた地域課題の見える化

(青葉区オープンデータPJ)


横浜市青葉区において役所内のGIS利用促進を図るプロジェクトで、さまざまな部署の職員が横断的に参加している。区役所や施設職員向けの操作研修や事例紹介、各課の朝礼での操作デモ、操作マニュアル・データカタログの作成、広報誌の発行などを通じて、オープンソースソフトウェア「QGIS」を操作・活用できる体制を作っている。今年は高齢者支援部署と浸水想定区域内の“支えあいカード”登録者のマップを作成し、防災活動に役立ててもらうため自治会に地図を配布して情報共有を行った。同プロジェクトの取り組みは横浜市でも評価され、今年度の優れた取り組みを評価する「チーム横浜賞」の副市長賞を受賞した。

■みんなの名前オープンにします。IPAmj,LibreOffice, and…

(目黒純氏)
https://extensions.libreoffice.org/en/extensions/show/1077

ソフトウェアやプラットフォーム上の制限から正しい字形を自由に使えないという人名をめぐる環境依存の課題を解決するため、IPAが開発した全ての字形を網羅した文字セット「IPAmj」フォントの入力環境として、LibreOffice用の拡張機能「IPAmj Font Charactor Finder」を開発した。同機能を使うことで、さまざまな漢字から異体字を検索し、効率的に入力することが可能となる。同機能を公開したところ、LibreOfficeの拡張機能として完全に動作し、LibreOffice公式サイトへの掲載が認められた。

■静岡県 富士山南東部/伊豆東部 点群3DTilesデータ

(柳下大氏)


G空間情報センターで公開されている航空レーザー測量(LP)で取得した3次元点群データを3DTilesフォーマットに変換した。変換元データは3.7TBの巨大な点群データだったが、3DTilesへ変換することでウェブ配信のデータとして加工なく利用することが可能となった。変換には、オープンソースの変換ツールである「py3dtikes」を使って、メッシュコードで7つのエリアに分割して処理を行い、全データの変換には1カ月かかった。また、データの利用イメージを高めるため、オープンソースのWeb3D描画エンジンであるCesiumおよびiTownsでビューアーを作成した。同ビューアーは360度回転表示機能や地点の登録機能、地点間のフライト機能などの機能を備えている。

■自転車とローカル線のつながり

(ツナガルドボク)


ママチャリのような自転車を鉄道の客車に載せて料金を取るアイディア。サイクルトレインは「列車や駅の中が混雑して危険」「自転車の運賃の設定が難しい」という課題があるため、混雑状況や距離、曜日・時間を踏まえて自転車の運賃を導き出す方法を作る必要があると考えた。そこで、松江駅構内に設置されている人流センサーをもとに取得した人流センサーデータとプログラミング言語のPythonを使って解析した。駅の人の出入りを調べて曜日により自転車の運賃の変更するとともに、当日の混雑によって最終的に運賃を決定するという流れとなる。

■防災INSIGHT

(斎藤仁志氏)
https://linkevery2s.github.io/bsinsight/index.html


スマートフォンなどで手軽に防災について学べる防災総合アプリ。「学習」「避難情報」「気象情報」「災害想定」の4つのメニューを用意しており、学習では防災のステージを「事前準備」「避難時」「帰宅後」「さらに詳しく」の4段階のコンテンツに分類し、災害の種類や非常時の持ち出しリストなど幅広く学べる。避難情報では、日本全国の指定緊急避難場所をマップで確認することが可能で、通行止め情報も掲載している。災害想定では、日本全国の洪水や土砂災害などの災害ハザードマップを調べられる。マップだけでなく文字情報もセットで配信することにより、視覚障害者も使えるバリアフリーな設計にしている。

■CivicTech俯瞰図鑑

(俯瞰図鑑ズ)
https://github.com/siramatu/brigade-visualizer/blob/master/doc/20201123_%E3%82%B7%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%86%E3%83%83%E3%82%AF%E4%BF%AF%E7%9E%B0%E5%9B%B3%E9%91%91.pdf

各地のシビックテックコミュニティの類似性を可視化するウェブアプリ。各コミュニティに対して得意分野に関するアンケートを行った上で、自然言語処理の分野で広く使われている「BERT」を利用して、シビックテックコミュニティ間の類似度や、シビックテックコミュニティとキーワードの類似度を可視化している。シビックテックに興味を持った人に各地のコミュニティの特徴をわかりやすく伝えるとともに、すでにシビックテック活動をしている人にも、他地域のコミュニティの特徴をわかってもらうことを目指した。今後は集めた情報をWikidata上でオープンデータ化したり、ウェブクローリングを使用して精緻化したりする予定で、具体的な活動内容や人の情報、団体の歴史や時系列情報などの追加も行う予定。

■senQyouプロジェクト

(senQyou)

コロナ禍において、オンラインで気軽に質問し合うことで情報共有を促進するため、専修大生から集めた履修経験やデータを、手軽にLINEで検索できるようにするプロジェクト。履修登録に役立つ授業情報やグルメ情報、サークル情報の3つの検索機能を備えるほか、知りたい情報がボットにないことを指摘し、提供できる申請機能や、自分が知っている情報をLINEボットに提供する機能の2つを備えている。課題の理解と情報収集を目的としたアンケートとオンラインの参加型・対話式ワークショップも開催し、アンケートは専修大学生から47件の回答を得られた。ワークショップは2回開催され、のべ14人の専修大学生が参加した、2021年度の新入生に向けて、データの見直しを行っている。

■食べてみりん

(食べてみりんプロジェクト)
https://tabetemi.jp/


豊橋市内の飲食店のテイクアウト・デリバリー情報をマップに集約したウェブアプリで、コロナの影響で打撃を受けた飲食店を応援するために、さまざまな企業や団体と協力して作成した。データ運用の流れを決めて自動化できるところは自動化し、手動での作業を減らすことで継続的に更新できる体制を構築した。マップ以外にも、飲食店がSNSで発信したニュースの閲覧やイベント情報、キッチンカーの出店情報なども調べられる。同プロジェクトで使用しているデータは、オープンデータサイト「Open Data HIGASHI-MIKAWA」にオープンデータとして公開されている。また、Code for Japanが勧めているプロジェクト「OPEN EATS JAPAN」の飲食店データの協力団体としても参加している。

【ビジネス/プロフェッショナル部門・最優秀賞】

■道路の三次元点群データ配信基盤

(インディゴ・ラボチーム)
https://tengun.z11.web.core.windows.net/#18/35.17474/138.90789

三次元点群データを効率よく参照/利活用できるウェブブラウザベースの配信基盤で、MMSなどで取得した大容量の三次元点群データから、特定の交差点などの狭域をピンポイントでクリッピングしたり、ダウンロードしたりすることができる。対象エリアの選択は、ポリゴンやラインでの指定など地図上で選択できるほか、道路識別子など他データとの重ね合わせによる検索手法も実装している。本サービスを活用することにより、災害時に必要な箇所へすばやくアクセスすることが可能となるほか、メタデータを活用して過去から現在の時系列データを比較することも可能となる。

【ビジネス/プロフェッショナル部門・優秀賞】

■釣りドコ

(TEAM釣りドコ)
https://turidoco.com/

ALB(航空レーザー測深)で作られた高精細な海底地形を無料で閲覧できるウェブアプリ。自治体(静岡県)が公開しているオープンデータが活用されているほか、ほかの人が釣った場所がピンポイントにわかる機能や、釣果記録のSNS投稿機能、エリアの概況解説、釣れている魚の検索機能、トイレ・周辺情報などさまざまな機能を備えている。航空レーザ測深技術は、これまで河川での活用がメインで、海域ではほとんど活用されていなかったが、今回の取り組みは、建設土木分野の測量成果であるオープンデータを釣りという趣味のサービスに適用した初の試みとなる。

■「子どもとお出かけ情報サイトいこーよ」で地域の魅力再発見

(アクトインディ株式会社)
https://iko-yo.net/


地元の魅力の発見を目的に、公園や観光地等のオープンデータを活用した地域情報を、お出かけ情報サイト「いこーよ」に掲載する取り組みで、公園や子育て施設、授乳・オムツ替え有無情報などのオープンデータを登録した。今年度は尾張旭市や日進市など愛知県内の7市町と連携し、現時点で全国35の自治体と連携している。この取り組みにより、オープンデータを登録した自治体の紹介スポット数が大幅に増え、自治体からも「自治体独自のアプリやサイトなどに比べて利用者が多く、情報の拡充がスムーズだった」といった感想が寄せられた。

■触れる暑熱環境シミュレーション

(SORAプロジェクト)
https://youtu.be/jlzhE9k9RA8


街中の暑熱環境を小型IoT環境センサーで測定し、オープンデータとして公開するほか、“触れるGIS”として三次元模型に投影する。模型上では、対話的に建物オブジェクトなどを触りながら、環境変化に伴う街の暑熱環境の推移を可視化できるほか、屋上緑化などのシミュレーション機能も搭載しており、GISによるシミュレーションを、直感的な操作を可能にすることで住民が扱えるレベルまで簡便化させた。現在、東急株式会社と横浜市が共同運営するリビングラボ「WISE Living Lab」にて常設展示中。

■マルチプラットフォーム対応の応急危険度判定支援ツール

(櫻井洋祐氏)
https://www.arcgis.com/sharing/rest/content/items/ab16c3cccf624264a4bcdbc2e82f1244/data


スマートフォンなどで応急危険度を判定できるマルチプラットフォーム対応の支援ツールで、無料で利用可能。判定士の現在地をGPSで特定できるほか、プルダウンでのメニュー選択や調査ごとのユニークなIDの自動付与、危険度の自動判定、写真の添付など入力作業の負担を軽減する機能を備えている。調査結果はクラウドGIS上にほぼリアルタイムに蓄積され、実施本部に戻ってからすぐに判定状況を確認できる。このほか、罹災証明書発行の迅速化やクラウドGISを活用した住民への情報公開など、さまざまな波及効果を期待できる。

このほかに、実行委員会による評価で表彰する「UDC with IDC2020実行委員会特別賞」や「オープンガバメント推進協議会賞」、「土木学会インフラデータチャレンジ特別賞」などの表彰も行われた。また、今年の活動に参加したすべての拠点の中から選ばれる「ベスト地域拠点賞」には新潟ブロック(大学連携新潟協議会 ビッグデータ・オープンデータ活用研究会)が選ばれた。なお、ベスト地域拠点賞を受賞した拠点は翌年度のUDCにおいて中間シンポジウムの会場となるため、UDC2021の中間シンポジウムは新潟市で開催されることに決定した。

表彰の終了後、実行委員長を務める関本義秀氏は2020年度を総括しつつ、来年度について抱負を語った。来年度は、各地のデータをG空間情報センター上で保管・管理・可視化し、API提供などを行う「デジタルシティサービス」を使いやすい環境にしてUDC応募に使えるようにするほか、応募作品の質と量を上げるために大学の先生との共催を増やしていく。

また、スマートシティ関連の取り組みを強化するため、国土交通省による3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU」との連携も図る予定。このほか、市全体をデジタル化して都市運営を試したい地域を募集するほか、ビジネス・プロ部門の認知拡大や地域拠点コーディネーターの交代、実行委員の増員などにも取り組む方針だ。

新型コロナウイルス感染症対策のためオンライン開催となった今回のUDC。関本氏は「2021年こそはコロナ禍が明けることを期待しつつ、どのような状況でもオンライン環境をうまく活用して楽しくやっていきたいと思っています。モチベーションを維持することが重要だと思います」と締めくくった。

「アーバンデータチャレンジ」公式サイト
https://urbandata-challenge.jp/