ドローンの地図といえばGoogleマップよりもmapbox!台風19号で被災地支援に取り組んだ2社が語るその魅力【mapbox/OpenStreetMap meetup】

ドローンの地図といえばGoogleマップよりもmapbox!台風19号で被災地支援に取り組んだ2社が語るその魅力【mapbox/OpenStreetMap meetup】

固定翼ドローン「eBee」シリーズ

ウェブ地図サービスのmapboxと、オープンでフリーな地図を市民の手によって作るプロジェクト「OpenStreetMap(OSM)」のユーザーコミュニティとの交流イベント「mapbox/OpenStreetMap meetup」の第2回が6日、「WeWork 日比谷パークフロント」にて開催された。

同イベントは、mapboxの日本法人(mapbox.jp)が青山学院大学の古橋研究室および NPO法人CrisisMappers Japan、OSGeo.JP、OpenStreetMap Foundation Japan(OSMFJ)と協力して開催するもので、2回目の開催となる今回は、「ドローン×地図」をテーマに、mapboxの地図サービスを利用しているPix4D株式会社とジオサーフ株式会社の2社がそれぞれのサービスを紹介した。

■数多くのドローン関連サービスにmapboxの地図が採用

両社の講演に先立って、青山学院大学の古橋大地教授が挨拶し、今回の趣旨について説明した。

青山学院大学の古橋大地氏

「mapboxのサービスで良いところのひとつとして、オフラインで使える点が挙げられます。Googleマップにもオフラインマップの機能がありますが、やはりインターネット環境がないと色々な面で使いづらい。mapboxやOSMは、インターネットのない現場へ自由に地図を持っていける環境を作ってくれました」

「とくにオフラインで使うことが多いのは、ドローンの運用時です。これからドローン飛び交う時代になっていく中で、それらをどうやって制御するかを考えた場合に、地図はとても重要になります。たとえば楽天のAirMapやDJIのドローン制御アプリ、国交省のドローン情報基盤システムなどはすべてmapboxの地図を採用しています。今、ドローンの業界で地図といえばGoogleマップよりもmapboxのほうが使われるケースが多く、その理由のひとつとして、オフラインで使いやすいというのはとても大きな要素だと思います。というわけで、今夜はドローンとmapboxの組み合わせでどんなことをしているのかを2社に発表していただこうと思います」(古橋氏)

■大量のドローン空中写真を高速につなぎ合わせるドローンマッピングソフトウェア

最初に登壇したのは、Pix4D株式会社でテクニカルセールスを務める脇田 エミリオ 和林氏。同社は10月23日に提供開始したドローンマッピングソフトウェア「Pix4Dreact」を提供開始した。同ソフトは、空撮画像から短時間で2Dマップを作成できるツールで、独自の高速スティッチング(複数の画像をつなぎ合わせて1枚に合成する処理)技術により、ドローンで撮影した大量の画像を短時間で貼り合わせて正確なオルソ(ひずみを修正した)画像を作成できる。作成したドローン空中写真のマップ上で対象地点の識別やマーキング、長さや面積の計測などを行える。

Pix4Dの脇田 エミリオ 和林氏

Pix4Dは、あらゆる画像から2Dと3Dのモデルを構築するソフトウェアの開発を行っている企業で、本社はスイスのローザンヌにあり、米国、ドイツ、中国、スペインに加えて、今年の7月から東京にオフィスを設立した。同社は、従来のSfM(Structure from Motion、複数の画像から被写体の3D形状を復元する処理)ソフトウェアでは、災害などの緊急時に必要なマップの作成に時間がかかりすぎてしまっていたため、災害対応チームの意思決定の支援ツールとして、従来よりも高速にマップを作成できるツールを開発した。同社のソフトは現在、5万人以上のアクティブユーザーを持ち、200カ国以上において洪水や地震、火災、行方不明者の捜索、難民支援などさまざまな用途で使用されている。

今回の発表では、災害地に被災地の状況をマップ上に反映して人命救助や支援活動のサポートを行う「ドローンバード」プロジェクトにおいて、台風19号のときに撮影された217枚・1.14GBの画像を地図上に配置して貼り合わせる処理を行ったところ、約10分で処理が完了し、高解像度のオルソ画像が生成された。

Pix4Dreact

脇田氏は、Pix4Dreactのベースマップにmapboxを採用している理由として、APIのライセンス料が安価である点や、地図の更新頻度が高いこと、APIストラクチャーがPix4Dのアプリ環境と親和性が高いことなどを挙げた。

「Pix4Dreactは使い方がとても簡単で、誰もが使いやすいソフトウェアです。ドローンを持っている方には全員使っていただきたいと思っています。当社ではこのほかに3Dマップを作成できるPix4Dmapperというソフトウェアも提供していて、こちらもmapboxを使用しています」(脇田氏)

脇田氏の発表を受けて、古橋氏もPix4Dの良さについて付け加えた。「Pix4Dで作成したオルソ画像をPDFでレポート出力するときに、mapboxのデータが付け加えられて出力されます。もしこれがGoogleマップの場合、それを印刷して配ることはできませんが、OSMデータを使っているmapboxであれば自由に配布することができます。そのようなライセンスの点も含めて、とても使いやすいレポートに仕上がるのがPix4Dreactの大きなポイントだと思います」(古橋氏)

■固定翼ドローンによる広域撮影に役立つmapboxの地図

続いて発表を行ったのは、スイスsenseFly社の正規代理店であるジオサーフ株式会社の小路丸未来氏。ドローン空撮の現場の話を交えながら、固定翼ドローン「eBee」シリーズの空撮を制御するためのソフトウェア「eMotion」について紹介した。eBeeシリーズは、DJIなどに代表される、複数のプロペラを持つマルチコプターではなく、固定翼を採用したドローンで、マルチコプターと比較して飛行時間が長いのが特徴。マルチコプターの飛行時間が20~30分間であるのに対して、たとえば最も飛行時間の長い「eBee X」は最大90分間飛行することができる。

ジオサーフの小路丸未来氏

小路丸氏は、台風19号のときに「ドローンバード」プロジェクトにおいて、調布や町田、君津などドローンバードと災害協定を結んでいるエリアにおいて空撮したことを紹介。君津市では1000haの範囲にわたって空撮を行った。

「eBeeを飛ばすときは、基本的には下見をすることにしているのですが、今回は災害時ということもあり、下見を行いませんでした。これだけ広範囲の、しかも土地勘のないエリアを撮影するには、やはりeMotion上で見られるmapboxの地図が役に立ちます。たとえばeMotionではmapboxなどの衛星画像を地図に表示したり、地形を色分けして可視化したりすることができるので、今回はこれらの機能も現場を知るために使いました」(小路丸氏)

飛行コースを設定するには、地形の確認のほか、そのエリアが飛行可能かどうかも確認する必要がある。eMotionでは楽天が提供する「AirMap」の飛行禁止区域のデータを収録しており、地図上にその情報を表示させることができる。さらに、着陸ポイントも地図を見ながら設定することができる。

eMotion

なお、eMotionには、mapboxの地図や注記データのほかに、senseFlyが独自に用意している衛星写真も使用している。衛星写真上では、送電線を示す赤い線も描かれており、この送電線のデータもmapboxのデータを使用している。

「今回のミッションは解像度が4cmなので飛行高度が190mと高く、送電線はあまり関係無かったのですが、飛行高度がこれより低くなってくると、送電線が入った写真が必要になります。固定翼ドローンで広域を飛ばすとなると、このような情報が出てくると非常に助かります」(小路丸氏)

送電線のデータを収録

小路丸の発表を受けて古橋氏は、ドローンの制御ソフトにmapboxの地図を使うことの意味について語った。

「送電線のデータはドローンを使う人にはとても重要で、そのデータを提供できるのは(国土地理院の)地理院地図とOSM、そしてOSMのデータを使っているmapboxくらいではないかと思います。やはり使う目的に合わせてさまざまな情報を引き出せるマップサービスが存在しないと、Googleには対抗できないと思いますし、このようなところがmapboxの良さだと思います」(古橋氏)

■次回のミートアップは12月4日に開催

2社の発表のあとは、mapboxのエンジニアによるプレゼンも行われた。今回のテーマは住所検索で、日本の住所システムは世界の中でも特殊であり、mapboxでは現在、日本の住所システムに合わせた検索のAPIを開発中だという。ナビゲーションサービスの提供にあたって住所検索は重要であり、今後は住所を読み仮名やローマ字でも検索できる機能や、郵便番号検索などの機能を追加する予定。

また、ガソリンスタンドやコンビニなど主要施設のPOI(Point of Interest、地図上にある特定の地点)のデータベースも別のAPIで提供する予定で、このPOIの検索APIについても近日中に提供開始する予定だという。

mapboxスタッフが最新情報を報告

mapboxを利用しているさまざまな企業と交流を深められるとともに、mapboxサービスの最新情報もいち早く知ることができるこのミートアップは、今後も継続して開催される予定で、次回は12月4日(水)の開催を予定している。また、同ミートアップの最新情報はFacebookグループでも入手できる。

Peatixのイベント告知ページ
https://mapboxjpmeetup02.peatix.com/
Facebookグループ
https://www.facebook.com/groups/514102766089765/