公共データの活用で地域課題の解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2023」キックオフ・イベントが開催

公共データの活用で地域課題の解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2023」キックオフ・イベントが開催

UDC実行委員長の関本教授

地域課題の解決を目的に、イベントやコンテストを通じてオープンデータや活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2023(UDC2023)」のキックオフシンポジウムが7月14日、東京・駒場の東京大学駒場第2キャンパスおよびオンラインでのハイブリッドで開催された。

UDCは2013年度から始まったプロジェクトで、社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)および東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)、東京大学生産技術研究所(IIS)(予定)、東京大学デジタル空間社会連携研究機構(DSS)が主催している。2023年度のプロジェクトのスタートを宣言する今回のイベントには、UDCの全国各地の拠点で活動する自治体関係者やNGO関係者、エンジニア、研究者、プランナーなど幅広い人々が参加した。

初めに、UDCの実行委員長を務める東京大学空間情報科学研究センター 教授/AIGID代表理事の関本義秀氏が本年度のUDCの趣旨説明を行った。

UDCは、地域課題の解決を目的に、各地域での年間を通した持続的なイベント開催と一般参加型によるデータ活用のコンテストを融合させた取り組みで、コンテスト賞金総額は200万円以上にのぼる。全国の都道府県ごとに地域拠点を認定し、年間を通じて各種イベント開催を実施して、持続的なコミュニティの形成や成長を目指している。

関本教授はUDCが始まってから今年までの10年間について、「初期の頃にはデータを使って地域課題を解決するコミュニティが各地で形成され、次第にシビックテックの考え方自体が普及していきました。一方で、その具体的なノウハウについては地域格差が開きつつあり、そこを埋めていくことが大切であると考えています」と振り返った。

UDCは2019年度から第2期がスタートし、今年度は第2期の5年目となる。第2期では「道路・交通」「河川・港湾・上下水道」「まちづくり・都市計画」防犯・防災」「医療・健康」など10の特定テーマを定めて活動しており、年度ごとに重点分野を決めて関連機関や関連学会との連携も進めてきた。2023年度の重点分野は「農業・林業・漁業」「産業・観光」の2つで、重点分野についてはコンテストにおいて賞金が加算される。

2023年度の重点分野は「農業・林業・漁業」と「産業・観光」

なお、2023年度の地域拠点は南北海道、岩手、宮城(2拠点)、山形、福島、埼玉、東京、神奈川、新潟、石川、長野、長野、岐阜、静岡、愛知、三重、京都、兵庫、奈良、和歌山、岡山、広島、山口、愛媛、高知、福岡、佐賀、熊本、大分、鹿児島、沖縄の30都道府県で、これらの拠点ではシンポジウムやワークショップなどさまざまなイベントが開催される予定だ。

続いて関本教授は、UDCがスタートしてからの10年間におけるAIGIDの取り組みとして、国内有償・無償の地理空間データの流通を支援するプラットフォーム「G空間情報センター」や、現状のデータをもとに居住地域の将来の環境を可視化する「My City Forecast」、市民協働投稿サービス「My City Report」、オンライン電子納品システム「My City Construction」などについて紹介した。

関本氏は締めくくりとして、「今年度は10周年ということで、みなさんからアイディアをいただきながら、また次にレベルアップしていくためのやり方も考えていきたいと思いますので、ご意見やアイディアをお寄せいただければと思います」と語った。

第1部ではこのほかに、元筑波大学大学院/日本総合研究所の野村敦子氏や、CSISの澁谷遊野准教授による講演、も行われた。さらに、地域課題解決のアイディアコンテスト「チャレンジ!!オープンガバナンス」運営コーディネーターの奥村裕一氏、オープンデータのコンテスト「Linked Open Data Challenge 2023(LODチャレンジ2023)」の実行委員長を務める古崎晃司氏、そして関本教授によるクロストーク「チャレンジ3兄弟座談会」も行われた。

チャレンジ3兄弟座談会

第2部では、UDCの地域拠点によるこれまでの活動報告および2023年度の取り組みなどの発表が行われた。冒頭では、UDC2022でベスト地域拠点賞を獲得した岩手ブロック(一関拠点)による発表が行われた。

岩手ブロックは2015年度からUDCに参加し、UDC2015のアプリ部門で銅賞、データ部門で金賞を受賞している。2022年度はデータを活用したマップとカードゲームの作成に取り組んだ。また、一関市花泉町にある県立花泉高等学校とも連携しており、同校は地域課題解決に向けた活動「花高魅力化プロジェクト(花プロ)」の一環として、地元の「花と泉の公園」の課題解決に取り組んでいる。

岩手ブロックの活動状況

花と泉の公園には320種・約4,000本の牡丹と3,000株のしゃくやくが咲いているが、どこでどのような花が咲いているかがわからず、見頃の時期を逃すと見ることもできなかった。そこで花プロでは園内のデジタルマップを作成し、スマートフォンで閲覧できるようにした。園内には同マップのQRコードを示した看板を常設で設置し、開花時期に開催されている祭りでは多くの人にデジタルマップを見てもらうことができた。今後はデジタルマップのバージョンアップを予定しており、ゲーム企画なども検討している。

岩手ブロックでは花プロ以外にも、一関の偉人として知られる建部清庵に関連するスポットをまとめたデジタルマップの公開や、一関市から栗原市へと至る街道のガイド、岩手宮城内陸地震の震源地や被災地をまとめたデジタルマップ、小学生向けのデータ活用カードゲームの制作などに取り組む予定としている。

このほか奈良や宮城(石巻)、広島、岐阜、佐賀など各地域拠点による活動報告や2023年度の取り組みの紹介が行われた後、データ提供・支援拠点である九州科先端科学技術研究所や国立国会図書館などによる発表も行われた。

UDCは今後、2023年度末にかけてコンテストの開催に向けてさまざまな取り組みを全国各地の拠点で実施する予定で、10月には10周年イベントとしてウェビナーやミニハッカソン(開発イベント)を開催する。その後、2024年1月末頃にかけてコンテストの作品募集が行われ、年度末のファイナルステージにて審査結果が発表される予定だ。

アーバンデータチャレンジ
http://urbandata-challenge.jp/

※記事中画像はキックオフイベントYouTube Live画面キャプチャより