地域課題をオープンデータで解決、「アーバンデータチャレンジ2020」キックオフ・イベントがオンラインで開催

地域課題をオープンデータで解決、「アーバンデータチャレンジ2020」キックオフ・イベントがオンラインで開催

オンラインでの開催となった今年度のキックオフ・イベント

地域が抱えるさまざまな課題の解決を目的に、イベントやコンテストを通じてオープンデータやその活用ツール、アイデアなどの創出に取り組む「アーバンデータチャレンジ2020(UDC2020)」のキックオフシンポジウムが6月30日、YouTube Liveにてオンラインイベントとして開催された。

UDCは2013年度に始まった取り組みで、社会インフラのデータに関する情報の流通環境を整備することを目的とした組織「社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)」および公益社団法人土木学会、東京大学生産技術研究所、東京大学空間情報科学研究センターが主催している。

「アフターコロナに向けたオープン・デジタルなまちづくりを考える」と題した今回のイベントは、都市インフラ管理のデータ基盤の構築を目指す「東京大学ス生産技術研究所『デジタルスマートシティイニシアティブ』第2回公開シンポジウム」および、土木とICTの融合促進に取り組む「土木学会インフラデータチャレンジ2020」も兼ねた共同開催イベントで、同プロジェクトの全国各地の拠点で活動する自治体関係者やNGO関係者、エンジニア、研究者、プランナーなど幅広い人々がアクセスした。

初めに、「デジタルスマートシティイニシアティブ」の中心人物の1人である東京大学生産技術研究所教授の野城智也氏が挨拶したあと、UDCの実行委員長を務める東京大学生産技術研究所准教授/AIGID代表理事の関本義秀氏が本年度のUDCの趣旨説明を行った。

UDCは地域課題の解決を目的に、地方自治体や企業、大学、市民活動組織などがデータを活用してチャレンジするコミュニティ形成型のコンテスト。誰でもコンテストに作品を応募することが可能で、賞金総額は200万円にのぼる。全国の都道府県ごとに1カ所ずつ地域拠点を認定し、年間を通じて各種イベント開催を実施して、持続的なコミュニティの形成や成長を目指している。

全国各地の拠点でアイデアソンやハッカソンなどを開催

2018年度までに全都道府県に地域拠点を設置完了したUDCは、2019年度から第2期が始まっており、「道路・交通」「河川・港湾・上下水道」「住宅・土地・公園・公共施設」など10の特定テーマを定めて活動している。年度ごとに重点分野を決めて関連機関や関連学会との連携も進めており、2019年度は「道路・交通」「生活・文化・地域アーカイブ」の2つを重点分野として、延べ80回のイベントが開催され、約1400名が参加した。2020年度の重点分野は「まちづくり・都市計画」および「教育・政治」の2つとなっている。

2020年度の地域拠点

「今年度は、参加社の裾野をさらに拡大し、ビジネスや学術分野のプロフェッショナルによる活動についても、UDCの趣旨に沿っている限りはきちんと評価できるように「ビジネス/プロフェッショナル部門(賞)」を新設します。また、UDC地域拠点にある大学などにおいてUDCに関する講演を開催するなど、教育機関との連携を通じた学生の参加支援も行います」(関本氏)

■まちづくりや教育をテーマとした講演を実施

関本氏に続いて、今年度の重点分野である「まちづくり・都市計画」「教育・政治」や、DX(デジタルトランスフォーメーション)、シビックテックなどに関連した講演も行われた。

【講演1】「裾野市が目指す真のスマートシティ」
裾野市企画部みらい政策課 係長 長田雄次氏
Code for Japan/Code for ふじのくに 市川博之氏

裾野市がCode for JapanおよびCode for ふじのくにと連携して行ってきたデジタル利活用の取り組みや、東京大学生産技術研究所との連携で構築したデジタルツインのプラットフォーム「デジタル裾野」について紹介するとともに、2020年3月に発表した「スソノ・デジタル・クリエイティブ・シティ(SDCC)構想」について紹介。同市が目指すスマートシティの姿について説明した。

「デジタル裾野」https://www.digitalsmartcity.jp/susono-city/

【講演2】「オンライン教育」と「教育のデジタル化」
東京大学大学院人文社会系研究科 准教授・大向一輝 氏
東京大学大学院情報学環 特任准教授・福島幸宏 氏

ZOOMや学習管理システム、Googleドライブ/Googleフォームなどの各種ツールを使ったオンライン授業について紹介。オンライン化によるメリットとデメリットを解説するとともに、教材をオープン化する取り組みについても紹介した。また、UDCそのものも教材のひとつになり得ることについても触れた。

【講演3】「国土交通データプラットフォームによるDX」
国土交通省大臣官房技術調査課 建設生産性向上推進官 廣瀬健二郎氏
土木研究所先端技術チーム 榎本真美氏
東京電機大学 研究推進社会連携センター教授 小林亘氏

社会インフラ関連の情報や点検結果、地盤情報などを検索・表示・ダウンロードできる「国土交通データプラットフォーム」について紹介。官民が保有するさまざまな技術やデジタルデータとの連携を可能にするプラットフォームの構築を目指しており、新たな価値の創造を目指してオープンデータチャレンジの開催も今夏に予定している。

【講演4】「COVID-19 とシビックテック」
一般社団法人 Code for Japan 代表理事 関治之 氏
東京大学生産技術研究所 准教授 関本義秀

COVID-19感染拡大に際してのシビックテックの動向として、東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトや、「新型コロナウイルス対策ダッシュボード」、支援サービスをまとめた「VS COVID-19 #民間支援情報ナビ」、意見募集サイト「VS COVID-19 アイデアボックス」のほか、テイクアウトマップのアプリや困窮支援NPOの相談支援チャットボットなどについても紹介。危機が発生したときに行動を起こすには普段からの経験が必要であり、今回のような取り組みを継続することの必要性を語った。

■11月には室蘭市で中間シンポジウムの開催を検討

第2部では、UDC地域拠点における2019年度の活動報告や、2020年度の取り組みなどの発表が行われた。また、データ提供・支援拠点のひとつである国立国会図書館による発表も行われた。

2019年の活動報告では、UDC2019南北海道ブロックの発表として、室蘭市企画財政部企画課 主事の川口陽海氏(Code for Muroran)が発表した。同ブロックは室蘭市と岩手県宮古市間のフェリー内で船内ハッカソンを開催するなどユニークな取り組みを実施し、UDC2019のベスト地域拠点賞を獲得した。今年度は新型コロナウイルスの感染状況を考慮しながら、室蘭~青森県八戸市間のフェリーハッカソンの開催を検討しており、11月14日には中間シンポジウムの開催も予定している。

2019年度の船内ハッカソンで生まれた作品「船内脱出ゲーム~船長からの挑戦状~」
(2019年度ファイナルステージにて撮影)

続いて、UDC2019でベスト地域拠点新人賞を受賞した京都ブロックの発表として、あおき地理情報システム研究所の青木和人氏が活動報告を行った。同ブロックでは国立国会図書館(NDL)関西館との共催でアイデアソンとハッカソンを実施し、NDLが保有するデータや京都府・京都市・精華町のオープンデータを組み合わせることにより、地域課題解決のためのアプリやツールを試作した。今年度も図書館や博物館などのデータと行政データとの組み合わせによるさまざまな可能性を追求する。

UDCは今後、2020年度末にかけてコンテストの開催に向けてさまざまなシンポジウムやワークショップなどの取り組みを全国各地の拠点で実施する予定で、2021年1月末頃にかけてコンテストの作品募集が行われ、年度末のファイナルステージにて審査結果が発表される予定となっている。

アーバンデータチャレンジ
http://urbandata-challenge.jp/