オープンデータ活用で地域課題解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2021」ファイナルステージがオンライン開催

オープンデータ活用で地域課題解決を目指す「アーバンデータチャレンジ2021」ファイナルステージがオンライン開催

実行委員長の関本義秀氏

地域の課題解決や魅力創出を目的にオープンデータやその活用ツール、アイデアなどの創出に取り組むプロジェクト「アーバンデータチャレンジ2021 with土木学会インフラデータチャレンジ2021」(主催:社会基盤情報流通推進協議会、公益社団法人土木学会、東京大学生産技術研究所、東京大学空間情報科学研究センター、東京大学デジタル空間社会連携研究機構)のファイナルステージが3月12日(土)、オンラインにて開催された。

アーバンデータチャレンジ(UDC)は、地方自治体発のオープンデータや社会インフラに関する情報収集・配信環境を整備し、このようなデータを使用したツールやアイデアなどを、ワークショップなどのイベントを通じて作品として仕上げるプロジェクト。全国の都道府県単位で地域拠点を認定し、さまざまなイベントの開催を通じて持続的なコミュニティの形成・成長・横展開に取り組むことを目的としている。また、地域拠点の活動を通じて生まれたアプリケーションやデータ、アイデアなどを表彰するコンテストも開催される。

同プロジェクトは2013年度にスタートし、2019年度からは土木学会と連携して「土木学会インフラデータチャレンジ」との共同運営として実施している。今回のファイナルステージは、1年間を通してさまざまな地域活動が行われた同プロジェクトを締めくくるもので、各地域拠点での活動を振り返るとともに、最終的に応募された作品の中から最終審査会を開催し、優秀作品を決定した。

はじめにイベントの実行委員長を務める関本義秀氏(東京大学空間情報科学研究センター 教授)が挨拶し、本年度の取り組みやコンテストの応募状況などについて説明した。

UDCは2019年からセカンドステージへと進み、さまざまな分野で課題を掘り下げていくために、「道路・交通」「住宅・土地・公園・公共施設」など10の分野を設置し、重点分野を毎年決めて、各業界と連携しながら進めていくことにした。2021年度の重点分野は「河川・港湾・上下水道」「防犯・防災」の2つで、今年度からは重点分野により一層の注力をするため、コンテストに受賞した場合は一律10万円の賞金加算が行われることになった。さらに、UDC主催でこの2分野に関するウェビナーも開催した。

2021年度の地域拠点は31となり、各拠点では2022年の2月末日時点において、オンラインを中心に延べ76回のイベントが開催された。前年度の57回に比べてイベントの回数は大幅に増えており、参加者は1,800名にのぼった。また、地域拠点の教育機関とも連携し、新潟大学、山形大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、椙山女学園大学、九州産業大学、熊本学園大学の7校より学生の参加支援が行われた。

コンテストの応募作品数は130作品で、このうち34の作品が地域拠点開催イベントからの応募だった。部門ごとの内訳は、アプリケーション部門が40作品、データ部門が9作品、アイデア部門が61作品、アクティビティ部門が13作品。なお、分野別で見ると、重点部門となった「河川・港湾・上下水道」が7作品、「防犯・防災」が30作品と、いずれも応募数が増加している。

2021年度の作品応募の状況

続いて、UDC2021の一次審査通過作品のプレゼンテーションが行われた。今年度、一次審査を通過したのは15作品。これらの作品に対して参加者からの投票が行われ、投票結果および審査員による評価をもとに優秀作品が選出された。受賞作品は以下の通り。

目次

【一般部門・金賞】

■AEDシートとAED設置場所のオープンデータ化

(UDC和歌山実行委員会)
https://kumano-sp.kiiminpo.jp/aed/

熊野高校の「Kumanoサポーターズリーダー部」による活動で、AEDの使用時に女性の上半身を覆う「AEDシート」を作製した。リサイクルを考えて廃棄傘を再利用して、消防署やAED販売会社へのヒアリングや試行錯誤を重ねて開発し、AED設置場所69カ所にシートの配布と設置状況の確認を行った。また、AEDの設置情報をオープンデータとして公開するとともに、ウェブサイトも作成し、利用可能な曜日やエリアで絞り込みを行えるように工夫した。

【一般部門・銀賞】

■由来のわかる地名カルタ「言の場」

(青島英和氏)
https://kotono.ba/

日本のいろいろな地名について、その語源と由来、歴史、地理的変遷などを発見できるサイト。カルタをめくるように地名を表示し、カルタをめくると地図が表示され、さまざまな地名がそれぞれどの地域に多く見られるのかを地図上で確認できる。地名由来の判定は、検索するための住所データとして、「歴史地名データ」、「Geolonia住所データ」、「住所基板データベース」、「地名集日本」などを使用している。

■未来を創る教育DX

(ジオネクスト)

2022年度の高校地理総合必修化に向けて、GISを得意とする測量業界が一丸となり、高校の教師や生徒へGISをサポートする「Gサポ」の活動を実施。Gサポの内容には防災・災害も含まれており、GISで身近なエリアの土砂災害警戒区域や浸水予想区域などを調査してもらうといったカリキュラムも提供する。Gサポはお金をかけずにオープンデータのみで実施することも可能で、学生や教師にもオープンデータの活用方法を考えてもらう。

■龍野高校周辺の内水氾濫ハザードマップ

(TTN75)
http://www.azeta.jp/kadaikenkyuu_2021/index.html

兵庫県がオープンデータとして公開している1mメッシュDEMとオープンソースのGISソフト「QGIS」を利用して、龍野高校周辺の内水氾濫ハザードマップを作成した。まず、想定最大規模降雨を算出し、段彩図を作製した上で周辺自治会とともに古地図と比較しながら検証を実施し、内水氾濫による浸水地域を明確化して地図上に可視化した。

【一般部門・銅賞】

■地域交通・観光活性化を目的とした謎解きゲームアプリ「船内脱出ゲーム なぞなぞクジラと不思議な船」

(チームうみねこパン)
https://nazokujira.sakura.ne.jp/

地域課題を解決する船内脱出ゲームを作成。ローカル船を舞台にした謎解きゲームアプリで、アプリとパンフレットと現実が連動し、謎解きを通して就航地の魅力を楽しく紹介する。ゲームを仕掛ける人、ゲームで遊ぶ人の双方の手間がゼロで、スマホひとつあれば遊べる。2019年度のUDCにおいて銀賞を受賞後、電気通信普及財団より補助金を獲得し、学生主体の産官学連携として開発・実証実験を行った。

■佐賀水歴史マップ

(チーム水歴史)
https://winter.ai.is.saga-u.ac.jp/water-map/

地域の水害に関連する石碑などの文化遺産や水に関係のありそうな地名、整備前の元々の地形、ハザードマップなどを重ねてスマホ上で見られるようにした歴史マップ。古い資料から地理データをフォーム入力できるようにして、国土地理院などが公開している電子国土基本図や浸水ハザードマップ、治水地形分類図、自然災害伝承碑、昔の地名などと、自分たちが作ったデータを重ねて比較できるようにした。

■Sake Analyzer

(日本酒Lovers)
https://sake-analyzer-udc.herokuapp.com/

日本酒を製造する酒蔵のためのウェブアプリ。新潟県内の酒蔵からのデータ804商品を使用し、原料・製法・成分の3視点から醸造データを検索し、可視化できる。酒蔵の垣根を越えて、各酒蔵におけるデータ分析や商品開発を支援する。データは酒造組合を通して各酒蔵から提供してもらい、それを新潟関連のデータを収集した「越後データプラットフォーム」にLinked Open Dataとして拡充している。今後は原料・製法・成分に加えて、製造地域や販売価格などデータ項目を拡充させていく方針で、消費者向けサービスへの応用も検討している。

■室蘭時層写真プロジェクト

(Code for Muroran)
https://openphoto.app/c/cfmuroran

古写真と現在の同じ場所とを重ね合わせて撮影した「時層写真」を使って室蘭の歴史をアーカイブするプロジェクト。SNSで協力を呼びかけて古写真を収集したほか、時層写真を集める街歩きイベントも開催した。2021年9月に写真募集を開始し、1カ月で古写真は100枚を超え、2022年3月時点で546枚が集まっている。写真の管理はインフォ・ラウンジ株式会社の「OpenPhoto」を使用し、ライセンス・タグなどの管理やカテゴリー分け、地図での表示などが可能。写真はすべてCC-BYのライセンスで公開している。

■シビックテック井戸端キャスト

(Cキャス)
https://anchor.fm/civictechcast

https://www.podpage.com/-5/

ポッドキャスト文化からシビックテックの入り口を広げることを目的に、シビックテックに関する取り組みや気になるニュースを雑談形式で届ける。ターゲットはシビックテックに関心がある人で、シビックテックの情報を得やすくすることで関心を持ってもらうことを狙いとしている。配信は初心者にわかりやすく、1エピソード10分程度にして、無理せず続けることを心がけている。2022年3月12日時点で、83エピソードを配信し、再生回数は713回となっている。

■カーネル密度推定を利用した愛知県・犯罪ヒートマップ

(椙山女学園大学)
https://mukai-lab.info/application/CrimeHeatmap

愛知県が公開している犯罪オープンデータを地図上にプロットして可視化した。この犯罪オープンデータには、発生年月日や発生時、発生場所などの情報を含む窃盗7手口が収録されており、愛知県を含む47都道府県が公開している。犯罪オープンデータには個人情報保護の観点から正確な位置情報が収録されていないため、都道府県・市区町村・町丁目の文字列から独自に緯度・経度を算出した。さらに、カーネル密度推定(Kernel Density Estimation)を利用して、ホットスポットと呼ばれる犯罪多発地点のヒートマップを生成した。

■GakutoBeat

(すがけん2021)
https://www.dropbox.com/sh/mgo4i67pyrdp3it/AAC-hGuwrzNib06MSiSe6JVsa?dl=0

VRゲーム「BeatSaber」をモチーフとしたリズムゲーム型フィットネスアプリ。VR空間上で自分に向かってくるオブジェクトを叩きながらスコアを稼ぐというルールで、ゲームプレイを通じて運動を行える。難しいボタン操作を減らすことで年齢・性別問わず楽しめるアプリを目指した。運動不足の問題を抱える郡山のアピールを目的に、VRで郡山の名所を眺めながら楽しく運動に取り組むことができる。

■新潟市道路網-POIグラフデータ

(鈴木源吾氏)
https://github.com/ggszk/niigata-gis-graph

オープンデータとして入手できる新潟市の国道や県道、市道、指定道路のKMLデータを活用して道路網をグラフ(ネットワーク)データ化し、POI(Point of interest)としてラーメン屋に関するノードを追加した。これにより、POIを経由する経路探索などの実験に利用できる。POIデータはラーメンデータベースの情報を利用し、スクレイピングして得られたラーメン屋の住所情報から緯度・経度を取得した。

■インターネット不要!どこでもオフライン地図サーバ

(チーム青学)
https://github.com/furuhashilab/URBAN-DATA-CHALLENGE

災害時に停電になった場合でも自治体の災害対策本部で用いられる地理情報システムが支障なく利用できるように、Raspberry Piにオープンソースソフトウェア群「国連ベクトルタイルツールキット」を実装させて、オフラインで地図情報が閲覧できるウェブ地図サーバーを開発した。サーバーのWi-Fi アクセスポイント化と、QRコードによるWi-Fi接続の簡便化を行い、行政職員自らが端末を用いてオフライン環境下でのデジタル地図の閲覧を可能にする。

■定年退職後のセカンドライフ適正診断ツール「人生これから診断」はたらく・学ぶ・たのしむ さいたま市編の開発

(シビックテックさいたま)

定年退職後、何をすべきか迷っているシニアに向けて、自分に合った活動の紹介と情報提供を行い、セカンドライフの一歩を促すための診断ツール「人生これから診断」をLINEチャットボットで作成した。作成にあたっては周囲のシニアにヒアリングを行い、性格や行動、お金などでタイプ分けをして、それに基づいて市民のシニア男女100名に複数回アンケートを行い、AIによるデータ解析を都度利用しながらクラスタリングで10タイプに分類した。

■バスあと何分ミニサイネージ

(がちもとさん)

バス情報フォーマット「GTFSリアルタイム」を用いて、熊本において最寄りのバス停にバスがあと何分で着くかだけを表示するミニサイネージを開発した。運行前にGTFSからデータを更新し、ディスプレイ付きマイコン「M5Stack」に装着したSDカードにWi-Fi設定や乗車停留所、降車停留所を設定しておくことで、起動後に1分おきにAPIにアクセスして「あと何分」という情報を取得する。サイネージ版とは別に、熊本駅周辺を3Dスキャンしてバーチャル空間にナビゲーションと「あと何分」の表示するAR版も開発した。

【ビジネス・プロフェッショナル部門・最優秀賞】

■Arakawa Digital Twin Online -荒川3D河川管内図 河川管理情報プラットフォームの構築

(荒川下流河川事務所)
https://www.ktr.mlit.go.jp/arage/arage01048.html

荒川下流域のデジタルツインを構築し、河川管理情報を一元化するとともに、その応用により浸水深が視覚的にわかる3D洪水ハザードマップを全国で初公開した。また、同プラットフォームを使って、流域全体で関係者が協働して水災害対策に取り組む「流域治水」を推進するとともに、高規格堤防特別区域や河川カメラのライブ映像、河川区域・河川保全区域、河川占用図なども載せている。流域治水を推進し、流域自治体の持続可能なまちづくりにも貢献する。

【ビジネス・プロフェッショナル部門・優秀賞】

■高山市におけるAIカメラを活用したデータ収集と地域での活用に向けて

(名古屋大学 安田・遠藤・浦田研究室)
混雑度可視化アプリ:https://mdg-web.main.jp/takayama/#/main
自店舗と比較できるデータ活用アプリ:https://share.streamlit.io/kyasby/viz_takayama/main/app.py

古い町並み周辺12カ所にAIカメラを設置し、32地点の計測データを収集して分析した。これにより、駅前を行き交う人の年齢層が2021年春以降に若くなっていることが判明した。また、古い街並において、従来は多いと思われていた人流のルートが、実際は少ないことがわかった。さらに計測データをもとに混雑度を可視化・予測するアプリを開発したほか、自店舗を訪れる人の数と通行人の量を比較できるアプリも作成した。今後も地元の人々とのワークショップを通じて、分析活用方法の検討を行う。

■位置情報ベースのタスク管理ツール LOBSTA で防災施設の点検・報告作業をデジタル化

(LOBSTA)
LOBSTA管理画面: https://udc2021.lobsta.io/
Node-RED画面: https://nodered.georepublic.net

位置情報ベースのタスク管理ツール「LOBSTA(Location-Based-Task-Management)」を作成。位置情報をともなうワークフローや現場作業などあらゆる業種のタスク管理を行えるツールで、施設管理や運送業、森林管理などさまざまな業務のデジタル化を促進する。防災施設点検にも利用可能で、避難施設などの重要なインフラの維持管理に役立ち、点検作業や問題報告の把握に役立つ。自治体が公開しているオープンデータとの連携も可能。

■Urban Pulse – pg_scheduleservによるスマートシティ向けスケジュールエンジン

pgRouting Team
https://demo.udc.pgrouting.org/

オンデマンドの輸送や物流、現場での検査、ゴミ収集など、都市のさまざまなプロセスに最適なスケジュールをオープンソースソフトウェアを使って生成できるエンジン。今回は市民にとって使いやすい予約ワークフローの自動化と、粗大ゴミの回収をスマートに管理するための方法を紹介した。

■伝統産業×ITで美濃焼の地域ブランディングを推進する活動

CODE for GIFU

岐阜県の伝統産業である美濃焼について、シビックテックによるプロジェクト形式で課題解決を行った。美濃の焼き物と文化をリブランディングして産業・地域を活性化する「セラミックバレー美濃構想」を掲げて活動している井澤コーポレーシションとともに地域ブランディングを検討し、オープンデータの活用やRESASによる地域分析や現地でのフィールドワーク、デザイン思考によるアイデア創出ワークショップなどを開催し、観光行程の支援アプリやロゲイニングアプリなどを作成した。

このほかに、「オープンガバメント推進協議会賞」や「土木学会インフラデータチャレンジ特別賞」などの表彰も行われた。また、今年の活動に参加したすべての拠点の中から選ばれる「ベスト地域拠点賞」には岐阜ブロックが選ばれた。なお、ベスト地域拠点賞を受賞した拠点は翌年度のUDCにおいて中間シンポジウムの会場となるため、UDC2022の中間シンポジウムは岐阜で開催される予定となった。

表彰の終了後、実行委員長を務める関本義秀氏は締めくくりとして以下のように語った。

「データを用いた地域課題の解決が自然に根付き、年度の最後に応募するというサイクルが今後も続いていけばいいと思います。UDCは来年度も続きますし、コロナ禍で状況が変わったのを経験したことも財産なので、来年度もよろしくお願いします!」

「アーバンデータチャレンジ」公式サイト
https://urbandata-challenge.jp/